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離してあげられなくて、ごめんね①
「あいつと付き合うのいい加減止めろって。」
「んー。」
ホームルームが終わった教室。
隣のクラスの恋人と帰るために支度をしているとホームルームでは寝ていたはずの友人がいつの間にか起きていた。
友人は良くない噂の恋人と俺が付き合っていることを良しとせず、ことある事にそんな忠告をするが、毎回聞き流して友人にため息をつかせる俺。
「じゃあ、また明日ね。」
「……おー。」
そんな友人に挨拶した後隣のクラスに行くと、恋人の姿が見当たらない。
「ねー。ナギは帰った?」
「あー……なんか帰ったっぽいけど。」
歯切れのわるい恋人のクラスメイトの返事に、ありゃ、今日は浮気相手と帰ったかな、と内心毒づいた。
「そっか、ありがとー。」
と、上部だけのお礼を述べるとクラスメイトは顔を歪ませ、しかし、目を反らしながら「いや、別に。」と早口で呟き、足早に去っていってしまった。
良くない噂のあるといった俺の恋人は、所謂浮気性というやつで、恋人がいたって周りがほっとかないような綺麗な顔立ちをしているから、それは毎日のように浮気をしているらしい。
らしい、というのも俺はそれを本人に確かめたことはないし、幸運にもそんな現場に鉢合わせになったことがないから確証はないのだけれども。
仕方がないので一人暮しをしているアパートに帰り、二人分の夕食を作っていると扉の鍵のあく音がした。
一人暮しのこの部屋の合鍵を持っているのは、確認するまでもなく恋人で、思っていたよりも早く帰ってきたなあ、なんて思いながら笑顔で彼を迎えた。
何か言いたげな彼の様子に気づかないふりをして、おかえりなさい、と恋人を抱き締めた。
おわり
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