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離してあげられなくて、ごめんね⑤
お昼の学食は、当然だけど結構混んでいた。
定食を持ちながら空いている席を見つけ、ようやく座れたテーブル席に、一息ついた。
「やっと座れた。やっぱりお昼は多いね。ジローいつも学食でしょ。大変じゃない?」
「一人だとそうでもないよ。適当に空いてる席に相席させてもらったりするし。」
「へー。雪村さんすごいっすね。俺、知り合いくらいにしか声かけられないかも。」
「それじゃあ、学食では生き残れないよ~。サバイバルだからね、学食は。」
「サバイバルか~。ジローはたくましいなあ。あ、そしたら俺、お邪魔だった?」
「全然。奢ってもらったし。」
「そうだった。たんとお食べ、ジローくん。」
「ゴチになりまーす。」
本当に、学食の中でも一番高いステーキ定食とデザートを注文したジローは始終ご機嫌で楽しそうに食事をしている。
学食初級者の朝木くんと俺は、ジローおすすめのラーメン定食。
流石、ジローのおすすめは値段はお手頃だけど、とても美味しい。
初めて学食に来るけど、たまには学食もいいなあ、と思いつつ談笑していると、ガタンと乱暴に隣の席に座ってくる人影が。
サバイバルだからなあと隣を見ると、思いもしなかった人物、ナギ。
俺と同じ理由で今日初学食に違いないから、見知らぬ人と相席よりはと選んでくれたんだろうけど、俺の隣を選んでくれたことに思わず笑みがこぼれる。
「ナギもお昼今から?」
「ゆうきのクラスに行ったらいなかったから。」
「来てくれてたんだ。ごめんね。ナギはもう注文した?」
「まだ。」
「そっか。一緒に注文しに行こうか。」
そういうと、頷いて席を立つナギ。
「それじゃあ、ちょっと席を外すね。」
「はいはい。僕たち、もう食べ終わるから先に帰っとくからね。村上もはやく食べてしまいなよ。僕がオススメしたのはアツアツのラーメン定食であって、こんな冷めてしまったラーメン定食じゃないからね。」
そういうジローのお皿を見ると、ステーキ定食はすでに空になってしまっていて、デザートもあと一口二口というところ。
「ジロー、食べるの早いね。デザートまでもう食べ終えそう。」
「そう?まあ、デザートは別腹だし。なんならあと一皿くらいは余裕。」
「、、、恐れ入りました。」
「ゆうき、はやく。」
ジローの大食漢な一面をみて驚いていると、すでに券売機の近くで待っているナギが。
「うん、今いく。じゃあね、ジロー、朝木くん。」
そういってナギの待っている券売機へと急いであるく。
「ごめん、お待たせ。」
「別に。ゆうきが食べてたの、何?」
「ラーメン定食だよ。」
「じゃあ、俺もそれにする。」
そういってラーメン定食を選ぶナギ。
ああ、幸せだなあと思う。
ナギの定食を持って戻ると、ジローと朝木くんはすでに帰っていた。
お昼休みの時間はもう少ししかないけれど、この穏やかな時間が永遠に続けばいいのに、と思った。
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