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離してあげられなくて、ごめんね④

(村上side) 「あ、朝木くん。」 昼休み。 朝寝坊して弁当を作る時間なかった俺は、ジローと一緒に学食へと向かっていた。 学食へと向かう一本道の先に先日のラブレターの主、朝木くんが見え、思わず声をかける。 「あ、村上さん。こんにちは。」 「うん、こんにちは。朝木くんも学食?」 「はい、弁当忘れてきて。」 「あれ、俺と一緒。俺も弁当を忘れてきちゃった。」 思わぬ再開に、ひとしきり話をしていると、下の方から「ねえ。」という声が聞こえた。 声の主は言わずもがな、ジロー。 「ああ、ごめん。ええと、朝木くん、この人はジロー、、、」 「雪村です。ユキでも雪村でもいいから。ジローはやめて。」 相変わらずなジローの自己紹介に思わず笑みがこぼれる。 「ジローいい名前なのに。 、、、んで、この子は朝木くん。1Aで優秀なんだよ。」 「別に優秀ってわけじゃないですけど、、、よろしくお願いします。」 「そうだ。自己紹介も終わったし、一緒にご飯食べない?朝木くんが良ければだけど。」 「俺は全然大丈夫です。」 「よし、そうと決まればお兄さんがおごりましょう。朝木くんは何が食べたい?」 「えっ?村上センパイがおごってくれるの?」 「ジローは同学年でしょ。もー、仕方ないなあ。ジローくんも好きなもの頼みなよ。」 「やったあ。じゃあ、何にしようかなあ。ここは、めったに食べれないステーキ定食にデザートをつけちゃおっかなあ。朝木くんも、遠慮せずに頼んだら?定食2つつけてもいいし。」 「いや、さすがにそれは入らないです。」 「うんうん、後輩くん2人が楽しそうで何よりだよ。」 きゃっきゃして食券を陣取る2人に、ほほえましくなりながらも、財布の中身を心配してしまうのだった。

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