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第54話
「お待たせしました…。どうぞ!」
「あ、教えたやつ作ってくれたんだ。すごいね。じゃあ遠慮なくいただきます。」
映画を見終わった後、お腹も減りご飯を食べることになった。俺は台所に立ち、慣れない調理をする。七瀬さんみたいに10分ぐらいで出来る予定がもたついて30分程かかって完成した。
机の上にはホカホカのご飯の上に生卵と麺つゆ、マヨネーズ、ブラックペッパーを振った卵かけご飯と魚のオイル漬けの缶詰にニンニク、少量の醤油をいれたアヒージョ風のメイン、そして豆腐とわかめのお味噌汁が並んでいる。
自分で作ったご飯を食べてもらうのは七瀬さんが初めてで、緊張する。
「んっ、んまい。」
「……っ、よかったぁ。」
ほぅ…と息を吐き出す。安心してると、味噌汁を吸っていた七瀬さんが「あ。これは惜しかったね。」と笑った。
「えっ!不味かったですか?」
「ん〜…、出汁が入ってないみたい。」
「…出汁?味噌汁って味噌入れたらいいんじゃないんですか?」
「入ってたが美味しいんだよ。あ、飲んでみて。」
自分のお椀を手に取り、ズズッと飲むと、なんだか腑抜けた味がした。少し味のついたお湯を飲んでるみたいだ。
「美味しくない…。」
「出汁って結構存在あるもんね。顆粒だしとか持ってる?」
「いえ、必要性を感じたことがないので、ないです…。」
「くくっ、そっか。」
七瀬さんはそう言いながらゴクゴクと味噌汁を吸っていく。
「七瀬さん!これ残していいですっ。無理して食べないで下さい。」
「無理してないよ。嬉しいからね。」
「いや、でも……」
さっき飲んで俺でも美味しくないと思ったのに嬉しいって……。あっという間に味噌味のお湯は飲みほされてしまう。七瀬さんは一息ついて、びっくりしている俺に笑いかけた。
「俺、料理作るのが趣味って、周りのみんなには知れ渡ってるからさ、自分が料理振る舞うのは普通なんだけど、こうやって料理用意してもらったのは相当久しぶり。やっぱ人が作ってくれたご飯は嬉しいし、自分でつくるよりすごく美味しく感じる。」
「あ、そう、なんですか…。」
「うん。だから、ありがとね風間君。また作ってくれると嬉しい。」
「っ、次は出汁いっぱい入れます!」
「ふはっ、いっぱい入れちゃうの?」
それから笑い合いながら一緒にご飯を食べて、食べ終わった後も抱きしめあったり、キスしたりゆっくりと過ごしていたら、あっという間に火曜日は終わってしまった。
楽しい時間はあっという間に過ぎると、どこかで聞いたことがあったけれど本当にそうなんだなと実感した。
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