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第6話

「ただのセフレの一人なのにさ。おまえもそうやって楽しんでるんだろ?」 プライドを保つためのつまらない嘘。返事がない。眠ったのか。 「別の人のほうがよかったかな……」 「っていうかさ」 雄樹のはっきりとした声が頭上から降ってきた。 「俺、あんたと遊んでるつもりはないから。他のヤツとはこんなことしない」 「……え」 「そうやってセフレを連発するとさ」  肩を抱く手に力が入る。環は痛みで顔をしかめた。 「……痛い……」 「もっと痛いことするよ? ヤリ殺しちゃうかも」 「……雄樹」 「ホント、セフレとか……俺以外は清算して?」  髪に口づけられる。優しく指がくぐってくる。めずらしく雄樹が熱心に口説いてくる。そんなものを信じられるほど、自分は甘くない。愛とか恋とか。そんな形のないものに、なぜ人は夢中になるのだろう。  形? 環はいつもは考えないようなことを考えていた。それは、保証が欲しいということ? 違う。自分はそこまで弱くない。雄樹が自分を弱くさせる。他の人間には決して許さない部分まで、少しずつ許してしまう。浸食されて、自分は弱くなっている。これが恋? ならば余計に質が悪い。弱くなる自分など、自分ではない。 「どうして?」 「あんたが他のヤツに抱かれてるのなんて、マジで無理。最初から押したら、あんたが引くと思って黙ってたけど……」 「いや、十分押されたけど。と、いうか、あれは脅しだったよね」  口づけが深くなる。髪を触れさせるのも、思えば雄樹だけ。少し混乱して環は黙り込んだ。 「ホントに……あんたが好きなんだ。だから、俺だけのものになって」 「男相手に、なに言ってんだよ」 「あんたに女は無理だ。手に余る。男ならあんたの身体も心も満足させてやれる」 「どういう……」 「俺なら、あんたを甘やかしてやれる」 「他の男でもそれはしてくれるよ」 「……わからない人だな」 「なにが」 「なんで最近、俺としか逢わないのか、とか。……ああ、もうやめた。あんたは仕事では切れるが、ことこういうことに関しては疎いからな。それを引っ張るのも俺の役目か」

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