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第79話 感謝の言葉
囚われていたビルから出て、ようやく外に出る。
ビル内は空調が整っていて平気だったが、一歩外に出れば冷気が肌をさす。
「っ……」
思わず身を竦めると桐原さんがコートを貸してくれた。
「霙が用意したその服は後で着替えるとして、ひとまずこれを羽織った方がいいかも」
桐原さんの温もりが残るコートを上から羽織って、夜の街を歩く。
「近くに車を停めてあるんだ、まずはそこで考えよう」
「はい……!」
* * *
黒塗りのセダン。
その助手席に乗って一息つく。
「追っ手は来てないみたい」
そう言いながら桐原さんがエンジンをかける。
追っ手なんてそんなの全然頭になかった。
そうだ、これから僕は桐原さんと逃げ隠れなければいけない。
あの京極さんなら追っ手を使って僕たちの行動を把握しようとしていたかもしれない。
油断していた。
敵は京極さんなんだ。
これからは常に気を張らないといけないのに……。
「も、もしかしてGPSとか……」
不安は一度生まれてしまえば大きくなる。
京極さんから貰ったこの服にも何か細工してあるかもしれない。
「うん、その可能性は高い。まずは服を新調しよう」
車を走らせる桐原さんの顔は険しい。
「白濱くん、寒くはない?」
こんな僕をいつも気遣ってくれる。
「大丈夫です。……あの、」
コートだって貸してくれたし、先程、暖房をつけてくれたおかげで寒くはない。
でも、桐原さんに大切な事を伝え忘れていた。
「どうした?」
「ありがとうございます。また巻き込んでしまうことになるのに、僕に勇気をくれて」
それは「一緒に行こう!」と桐原さんが言ってくれた言葉のお礼。
僕の為に力を貸してくれる桐原さんに対する感謝の言葉。
「白濱くん、いや……雪兎くん。必ず逃げ切ろう」
「はい……!」
桐原さんに初めて名前を呼ばれて、なんだか擽ったい気持ちになった。
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