89 / 89

第87話 招集

 逃げる雪兎たちとは裏腹に、京極組の構成員たちは突然の若頭からの招集に困惑していた。  それは、まだ日が昇る前の未明の出来事。  これから何が起こるのか分からない組員たちは、嫌な知らせか、はたまた良い知らせなのか何も聞かされず、ただ若頭からの招集に遠方からも多くの者が馳せ参じていた。  宴会場に続々と集う男衆たち。    まだ新入りの若中と呼ばれる組の子分から、鍛え上げられた舎弟たちは勿論、屈強なボディーガードも多くいる。  舎弟より少し年のいった舎弟頭もいれば、更にその上の格をいくのは組の相談役を任されることが多い最高顧問。  その中には羅刹の四人の面々も揃っていた。  ざわざわと落ち着かない部屋の空気。 「組同士の抗争か?」   「それにしたって数が多すぎる」   「傘下の龍堂(りゅうどう)組がやらかしたって聞いたぜ」  何の為の招集か分からない組員たちは、ありとあらゆる憶測を立てる。  そんな構成員たちのざわつきを愉快そうに眺めるのは羅刹隊に所属する一人、ルカ。 「いや〜賑わっとりますなぁ〜。白濱くんも居らんなって……はて、自分らの主は何処(いずこ)へ?」 「ルカ。少々お喋りが過ぎますよ」  冷たい口調ながらも顔には笑みを貼り付けたリトが窘めるように言う。 「堪忍堪忍〜。けど、籠(かご)の中の兎を逃がしたんは若はん本人やろ? そうとしか考えられへん。うちの若はんは何を考えてるんやろかねぇ」 「っ、」 「うわ〜……あれリトさん絶対怒ってるッス」 「うん……今日の……リト、雰囲気……怖い……」  小声で話す二人はレオとロウ。  常に作った笑顔を崩さないリトの顔が一瞬歪んだのを見て、二人は「ひいっ」と小さく悲鳴を上げた。

ともだちにシェアしよう!