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 朝起きたら、恋人の両手が触手になっていた。  何を言っているのかわからないだろうが、正直俺にも何がなんだかわからない。  昨夜2人で眠ったダブルベッドの上で向かいあって座っている恋人の勝一は、パジャマの袖の中から生えている、手首くらいの太さのつるんとした、うねうねと動くピンク色の触手を見ながら、ものすごく嬉しそうな顔をしている。 「うん、これはやっぱり触手プレイをやれってことだよな!  よし洋人、やるぞ、今すぐやるぞ!」 「やらねーよ!  昨夜さんざんやったばかりだろ」 「やったけど、あれは普通のセックスだもん。  触手プレイは別腹だって」 「っていうか、お前はまずその両手に驚け。  そんで今すぐ医者に行け。  あそこの内科、土曜日も午前中は開いてるから……って、触手って内科でいいのか? 外科? 皮膚科?」  いや、たぶんそういう問題じゃない。  両手が触手になる病気なんて、きっとどんな医者に行ったって治せない。  なんというか、俺も冷静なようでいて結構混乱しているらしい。 「えっ、いやだよ。  洋人と触手プレイやるのが、ずっと夢だったんだ。  それがやっと叶うのに、医者なんかに行ってる暇ないよ」  ……うん、まあお前はそう言うよな。知ってた。  勝一と知り合ったのは大学生の時で、当時はまだ2人とも自分がゲイだとは思ってもみなかったが、その頃からこいつのエロマンガとエロDVDのコレクションの9割は触手ものだった。  色々あって勝一と付き合うことになったが、こいつのセックスは若干激し目なことを除けばいたって普通で、ロープや変な玩具を使われることはなかったから安心していたのだが、どうやらそれは触手プレイをやりたくないというわけではなく、単純に本物の触手が手に入らないからやらなかっただけだったらしい。 「なー洋人、お願いだからやらせてくれよ。  実際に触手プレイが出来る機会なんて、この先あるかどうかわからないしさ。  頼む、お願い、この通り!」  勝一は触手になった両手を合わせて拝むようにして頼み込んでくる。  触手の先っぽがうねうねと動いているから一瞬ふざけてるのかと思ったけど、その顔つきは真剣で、勝一の本気度が伝わってくる。  あー……もう、結局俺はこいつに弱いんだよな。 「わかった。しゃーないから一回だけ付き合ってやる。  けど終わったら、その手を元に戻す方法を一緒に考えるんだぞ」 「うん! ありがとう、洋人!」  俺がしぶしぶうなずくと、勝一はぱっと嬉しそうな笑顔になった。

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