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第2話

 二人が通う大学は生徒数が数万人のマンモス校だ。そんな中でも祥平は、際立ってひと目を引く容姿を持っている。  クオーターで、一八五センチの長身で、脱いだら細マッチョなんて、どこのモデルだと、貧弱に近い体型の樹里には妬ましいだけだ。  実際何度も芸能界にスカウトされたらしいけど、祥平は見た目ほど中身が浮ついていなかったのか、見向きもしなかったらしい。  モデルばりの容姿の祥平は、いわずもがな、女の子に激モテだ。樹里が恋人になってもそれは変わらない。以前ほどではないが、よく女の子にナンパされるし、本気の告白もされているらしい。昔の祥平は自分の黒歴史と言うくらい女性関係がだらしなかったが、今は樹里一筋だと言うし、その言葉に嘘はないと樹里は信じている。  だから樹里はいつも思うのだ。祥平はどうして自分を好きになったんだろうと。  入学式で祥平を見かけた樹里は、彼のとびぬけた美貌に驚いたものの、まさか知り合いになるなんて思ってもみなかった。  樹里は一般入試で入学したが、祥平は附属高校から推薦で上がってきた。その時点で祥平はセレブ確定だった。この大学の附属高校には裕福な家庭の子弟が多く通っているからだ。  入学当初から祥平は常に派手な男女に囲まれていた。明らかに住む世界が違いすぎているのも、遠巻きにしていた一因だったのに。  だが二人は学部学科が偶然同じで、同じクラスになったのだ。  それでも樹里から祥平に話しかけることはなかった。  顔だけ知っている仲から口を聞くようになったのは、共通の友人である宗正実(むねまさみ)を介してのことだった。  話してみると祥平は見た目ほど派手な人ではなかった。どちらかといえば真面目な性格なのに、わざとちゃらそうにふるまって本質を見せたくないタイプなのだと、次第に分かってきたのだが。  それから紆余曲折あって、樹里は祥平に告白された。  その時すでに樹里は祥平を好きになっていたから、告白は青天の霹靂だった。まさか祥平が同じ気持ちでいたなんて、想像すらしたことがなかったのだ。  樹里は高校生の時、年上の男性と付き合っていたこともあって、自身が同性に好意を持ったり、身体をつなげることに抵抗がないことは分かっていた。  だが祥平は違う。綺麗な彼女がいたのを樹里は知っている。だから、祥平が樹里を好きになったとしても、それはきっと一時の気の迷いで、いつかは本来の道に戻っていくに違いない。  祥平は樹里の抱くこんな疑念を全て見抜いていたのかもしれない。  告白してきた時の祥平は、いつも自信満々な彼には不似合いなほど、緊張していた。  ーー俺を信用できないのは分かってる。でも樹里が好きなんだ。どうしようもないほど。お願いだから、俺の恋人になって。  樹里の手を握る祥平のそれは、可愛そうなほど震えていた。  ーーうん。  好きな人に告白されて、どうして断れるだろうか。  晴れて二人は恋人同士になり、今年の春からは祥平のゴリ押しでルームシェアという形での同棲まで始めてしまったのだ。

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