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第1話

 白を基調とした待合室には以前にも来たことがある。  マッチング支援システムに登録する時にもここに来た。  あの時はこんな風になるとは思っていなかった。  きっといい人と出会って、番になり、可愛い子供を何人も産むんだとそう思っていた。 「これ、書類。よく読んで名前と捺印をしてって」 「……わかった」  広い待合室はシンプルな白いソファーが何列も並び、同じ色の壁にはマッチング支援システムについての説明がされているポスターが貼られているだけの殺風景な場所だった。  登録する時は何人ものΩがここに来ていた。マッチング支援システムはΩにはとって身を守ることができ、衣食住も確保できるからだ。  Ωの人権を保護するため、そして少子化対策のために国はαとΩにマッチング支援システムを導入した。  登録者は検査を行い、遺伝子の組み合わせが最も良いαとΩにお見合いをさせる。  互いが相手を気に入れば契約を結び、番となり子供を作る。  この支援システムを使って番になると国からの支援が受けられる。  発情期のあるΩは働いてもαやβのようにはいかず、生活困窮者が多い。さらに発情期をコントロールする抑制剤は高額なため、それを購入するとますます生活ができなくなる。  しかしこのシステムに登録すれば国からの支援金で抑制剤も購入でき、無理に働かなくとも生活ができる分の援助が受けられる。  相手を選ぶのはあくまで遺伝子の組み合わせによるもので、自分で選ぶことはできないがΩであることで苦労してきた人間にはありがたいシステムだった。  だがこの支援を受ける条件の一つに、三年以内に子供を作ること、というのがある。  現在、国は少子化が進んでおり、この支援システムを使って子供を作ってもらい少子化対策をしようとしている。  支援システムによって子供を作った番にはさらに子育て支援が受けられ、手厚い保護がなされる。  ただし、三年以内に子供ができなかった場合、マッチングをやり直すため番を解消しなければならない。 「書けたら診察だって」  細かい字で書かれた書類に目を通している己の番に、同じく書類を読んでいる圭が言った。 「診察?」  書類から視線を圭に移して、寿史は怪訝な顔をした。

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