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第1話 晴れていたはずだった
この神社に参拝に来るのは、何度目だろうか。
日向(ひなた)は青い空を見つめた。
何か困ったときや、悩むときは必ずここに参拝してきた。
日向が幼い頃からの、いつもの場所だった。
今日ここに来たのは……祖母が他界したから。
育ての親と言っても過言ではなかった。いつも日向を大切にしてくれた祖母。
時間の流れはとても残酷で、あらがうことなく祖母はこの世を去っていった。
「日向が心配だけど、大丈夫だよね?」
最期の声が今でも覚えている。
心配をかけないようにと「心配ない、僕は大丈夫だよ」と答えた。
本当は不安でどうしようもなく、叫び泣きたいくらいだった。
そんなことが過ぎて、祖母の納骨式は静かに行われた。
そして心の支えだった祖母がいなくなり、どうしようもなく日向はここへ来た。
**
祖母と別れてから半年が経った。
大切な祖母がいなくなっても、世界はいつも通りに動いていて……険悪だった父と母は別々の人生を歩むことになった。
(僕だけが……過去に取り残されたまま)
日向は二十歳の六月で、雨がしとしとと降っていた。
これから一人で生きていかなければと、気持ちを強くあろうとする。
それでも、どうしようもなく泣きたいときは……今いる神社で一人泣く。
歳ばかり重ねても、日向の中身は弱い。
とても、弱い。
**
ふと気がついて、日向は空を見上げる。
今朝ここに来た時は青空だったから。
けれど今は、小雨が落ちていた。
(狐の嫁入り、だ)
太陽が出ているのに、雨が降ってくるのことを祖母はそう言っていたのを思い出した。
日向は、泣きたい気持ちに襲われる。
両親を見て育ったせいか、結婚の願望どころか人を信じることが難しい。
これから一人で生きていく姿しか、日向は想像できなかった。
「おや、迷子かい?」
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