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第6話 終章

「ヒトの世に存在しないモノ。ただそれだけ」  つまりは人ではないと柊は言う。 「しかし契約は成立した。日向は私の嫁になった。これはどんなことがあろうと違えることは不可能。……弱っているときに付け込むのが、私のようなモノ」  少し申し訳なさそうに、寂しそうに柊は言葉を綴る。 「……騙したようで、悪かった」  この森はこの世とあの世の狭間に存在する、世界だと柊は説明する。  人が迷い込むと、自力で元の世界に戻ることは出来ないらしい。  大抵はヒトでないものに取り込まれ、糧にされてしまうと。 (柊は助けてくれたのかな)  そう考えると柊にとっては最大の譲歩で、最大の愛情表現ともいえるだろう。  まだ、自分を必要としてくれる人がいる。 (かなり嬉しい……かも)  雨粒の反射する光が、日向の心の奥底を照らしていく。 (見えない先の未来は何が起こるか、本当にわからないもんだなぁ)  鼓動が早まる日向の目の前に、柊の手のひらが差し出された。  日向は自分の意思で、それに手をのせる。   「さぁ日向、共に行こうか。日向の住処へ」  

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