5 / 5
【+α】梅雨っていうのは、いつだって独占欲でいっぱい
「うまぁい!」
「ほんと?よかったー。」
家に着き、風呂場で軽く運動を済ませて、ナオくんに学校で作ってきたお菓子をあげた。
マフィンを美味しそうに頬張り、紅茶をズズッと啜るナオくん。
「このクッキーも美味しい!サクサク!お店のみたいだよ、シュンくん!」
リスのように、これでもかってくらい口一杯に詰め込み、もぐもぐと咀嚼して口周りに食べカスを付ける。
美味しそうに、幸せそうに食べてくれるナオくんに、嬉しくなって、こっちまで幸せになって…、まるで幸せが伝染しているかのようだ。
「こらこら、もっとゆっくりお食べよ。」
「んふふ、うんまぁー!」
本当に甘いものが大好きなんだな、と思うと同時に、ふとナオくんが言っていた"甘い匂い"という言葉を思い出す。
「…そういえば…。」
お菓子作りの時、エプロン着たな…。緒方が持ってきたから受け取ったけど、あいつも同好会に入ってるわけじゃないから、エプロンとか持ってないよな、普通……。ということは、元々そのエプロンは…。
「?どうしたの、シュンくん?」
「えっ?あっ、いや、なんでもないよ!」
甘い匂い…。調理室自体、いろんな匂いが充満してて気が付かなかった。
「そう?クッキー全部食べるよ?」
「うん、いいよ。マフィンも全部ナオくんのだから。」
「え!ほんと!?やったー!」
ごめんね、ナオくん。他の人の匂いで、不安にさせちゃって。
「美味しい?」
「うん!めっちゃ美味しい!」
許してね、ナオくん。君の独占欲を嬉しく思うこの僕を。
「…好きだよ、ナオくん。」
「?俺もめっちゃ好きだよ!」
だからこれからも、僕を独占し続けて。
「…あ、また雨降ってきた!」
「今度恐竜のカッパ買ってきてあげるね。」
「…!要らないし!!」
-FIN-
ともだちにシェアしよう!