6 / 52

金曜日(3)

煌々(こうこう)と明るい室内で見ると、ナギサは全身くまなく小麦色の肌をしていた。全裸になって日焼けサロンで焼かなければ、こんなに均等には焼けないだろう。 着衣で見た印象に輪をかけて、病的なほど細い身体だった。鎖骨やあばら骨が、かさついた茶色い肌から浮き出している。 シャワーから全裸で戻った姿をまじまじと見ていたら、ナギサは小鼻のピアスを指で軽くはじいてにやりと笑った。 「なあによ、見とれちゃって。そんなに飢えてんのぉ?」 和臣の眉間にしわが寄る。やはり部屋にあげるべきではなかったか。好みでないことこの上ない。 ため息をつくと、白い煙が一瞬視界を遮った。 「人にシャワー浴びさせといて、自分は浴びないとか、エトぉ、鬼畜だねぇ。」 ナギサがそう言ってにやにやと笑う。 「初対面の人間を部屋にあげて、風呂にこもれるほど不用心じゃないだけだ。文句があるなら出て行け。」 「やだよお、外寒いもん。人肌で温めてもらわないと、オレ凍死しちゃう。」 ナギサは和臣の前を横切り、勝手にベッドに上がって布団にくるまった。 「あー、布団冷たいぃ。エトぉ、早く来てぇ。」 和臣は大きく煙を吐き出して煙草を灰皿に押し込むと、気乗りしない足取りでベッドに近づいた。 「あっためてよ。」 ナギサは大きな目を細めて妖艶に誘う。 本当に寒いのか、和臣に伸ばした指先はわずかに震えていた。 「ん、ん…… んぅ…… 」 和臣がベッドに入ると、ナギサはまず唇を重ねてきた。舌を絡ませ軽く吸うと、舌先で和臣の上あごの奥をちろちろと舐めた。 一夜だけの相手に、キスをしたがるやつとしたがらないやつがいる。ナギサは前者のようだ。 一度離し、和臣の唇を舐め、また舌を入れてくる。意外なほどに、何の味もしない舌だった。 俺のは煙草臭いんだろうな、と和臣は思う。 綾人(あやと)によくそう言われたな―― 和臣はナギサの胸を押して強引に唇を離すと、その勢いでシーツに押しつけて首筋を吸った。 「あ…… っ」 ナギサが小さく反応して首をそらせる。声と反応は悪くない。和臣が唇をつけたままベッドサイドに手を伸ばすと、ナギサの細い腕が追いかけてきてそれを制した。 「電気、消さないでよ。」 挑戦的にそう告げる口元が、二人の唾液で濡れていた。 「こんな明るいところでするのか?」 「その方が燃える。」 ナギサはきっぱりとそう言って、自分の唇を舐めた。 いちいち言うことが好みじゃない。ただ、小麦色の口角をなぞる赤い舌が、官能的と言えなくもなかった。 「しゃぶれ。」 和臣が短く言って身体を離すと、ナギサはぽかんとした。 「勃たせろよ。勃ったら挿れてやるから、しゃぶりながら自分で慣らせ。」 ナギサは驚いたように和臣を見ている。 頭の回転が遅いのか…… ? そう思わせる間をおいて、ナギサはにやっと笑った。 「洗ってないくせに、このヘンタイ♡」  

ともだちにシェアしよう!