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第3話
「ケイ……くん?」
「言ったやろ、後悔すんなやって。責任とって貰うで」
「は? あ、いや、おれもぉ無理……」
「無理ちゃうって、行ける」
「運動部と一緒にせんとって……っあぁ!」
「今日、俺も部活休んでるし、自主トレ必要やろ?」
「そんな……ぁあっ」
晶の言葉を無視し、圭一は腰を揺らし始めた。ヒンヒン泣きじゃくる晶に、圭一は一層興奮して晶の中を穿つ。
「っや、ケイ、く、っも、やぁ……っ」
「や、やないやろ。誘ったんはアキやで」
「でも……ぁあっ」
「ほら、また勃ってきた」
「ひっ!」
「自分だけイって終わりにしようなんて、やっぱ鬼やな、アキ」
「あっ、あ、ごめん、て、なぁ、ケイ――っ!」
「あーあ、またイった。アキのえっち」
涙と汗と精液でグチャグチャの晶に、圭一は嬉しそうに笑った。もう外の天気は分からない。雨の音も雷の音も聞こえない。二人分の体重が乗ったベッドがギシギシと軋む音が、雷みたいにうるさい。
「ふ、ぅ……ケイ、くんっ」
「しゃあないな……俺がイったら、終わるから……」
イヤイヤと首を横に振る晶に圭一は苦笑して、身体を更に密着させる。晶の足が圭一の腰に巻きついた時、二人は唇を合わせた。
「んんっ、ふぅ……っ」
イク時にキスをするのは圭一の癖だ。言い方を変えれば、これで行為を終えると言う意味にもなるから、晶はなるべく顔を近付けるのを嫌がる。それでも正常位で繋がるとキスもしたくなるし、実際トロトロに溶かされている間に唇が重なっていることもしょっちゅうだ。自分の中でビクビクと圭一自身が達したことに気付いた時には、晶も自分の腹に濁った欲をまた飛ばし、そこで意識も飛ばした。
「……さいあくや」
圭一のカバンに入っていた部活のタオルで身体を拭いてもらいながら、晶はベッドから動けぬまま呟いた。意識が戻った時、外はいつの間にか暗くなっていて、雨も止んでいた。
「なにぶーたれとんの。自業自得やろ」
「……俺がやるって言うたのに」
「後悔すんなって言うたやろ」
「そんな――」
「動けなくなるくらい気持ちよかった癖に」
「ケイくんのアホ……」
圭一は勝手に晶のクローゼットからシャツと下着を出して晶に着せる。借りるで、と返事を待たずに自分も適当に引っ張り出したシャツに袖を通した。晶の服の中でも大きめのサイズを選んだが、それでも圭一には小さかった。
「アキ、俺のシャツ何枚か置いてていい?」
「は? なんで?」
「着替え無いの不便やし。うちにもアキの服とか歯ブラシとか置いとったらいいやん」
「えぇー、めんどい」
「つか、おばさんにはさっきOK貰ったし」
「……へ? は!? いや、なんで!?」
圭一の言葉に晶は腰が悲鳴をあげるのも忘れるほど勢いよく起き上がった。その身体を抱きしめながら、真ん丸に見開いたままの晶と額をくっつけて圭一は笑う。
「俺らが付き合ってんの、おばさんにも俺のオカンにも知られてんの知らんかった?」
「……へぁ?」
「流石にセックスしてることは知らないみたいやけど、アキのデレデレした顔でバレてるってさ」
「でっ、デレデレなんてしてへんよ!?」
「だから、バレバレなんやって」
圭一の言葉に、晶の顔が真っ赤に染まった。ワタワタと表情を変えて慌てる晶に、圭一はまた唇を重ねた。
「……チューで誤魔化すなや」
「だから、誤魔化すも何も、もう知られてんの」
子供のようにむくれる晶の頬を摘む。その時、部屋の外から晶の母親の声が掛かった。
「晶ー、ご飯よー! ケイくんも食べるのー?」
「はい! いただきます!」
「なんで返事すんねん!」
「俺も聞かれたやろ、ほら行くで」
「いった! ケイくん、自分で行くから! 米抱っこはやめて……っ」
圭一は晶を米俵を担ぐように抱き上げると、部屋を出て食卓へと向かった。
静かになった部屋、ローテーブルの上のルーズリーフには、晶と圭一の名前を相合傘にした落書きが消されずに残っていた。
End
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