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 だが翌日、園山は学校に来なかった。今日でテスト一週間前だというのに、風邪でも引いてしまったのだろうか。それとも昨日の急用がまだ済んでいないのか。  後者の場合、明日には来るだろうと思い、大して気に留めなかった。    ちなみに今日、園山のテストの際の耳栓着用は許可してもらえた。  しかし次の日も園山は欠席だった。おとといまでは元気だったのに、急に体調を崩してしまったのか。もしかしたら急用で帰ると言っていたのは、体調が優れなかったからなのだろうか。    あれこれ思案するが答えは出てこない。放課後になるのを待って、紫藤先生に直接尋ねてみよう。  ――と思っていたのに、授業が全て終わると、祥が行くよりも先に先生から呼び出されてしまった。  テスト一週間前からは職員室に入れなくなるため、誰もいない空き教室で待つように言われてある。  しばらく待っていると、紫藤先生が入ってきた。どこか不安げな顔をして。 「井瀬塚、お前園山のこと何か知ってるか」  先生は入ってくるなり、前置きも無しに本題に突入した。 「いえ、それは俺のほうが知りたいくらいで……」  学校にも連絡はいってないのか、と少し驚いてしまった。園山が無断欠席するようには見えないのだが。 「こっちから電話しても全然出ないんだ。お前、園山に何かしたのか?」 「えっ……」  何も――――してなくはない。おととい、園山が眠っている間にヘッドホンを外してしまった。あの時は許してもらえたと思ったのだが、学校を休むほどショックだったのだろうか。軽率な行動は慎むべきだったと、激しく後悔する。 「まあ、園山だって成績つかなくなるの嫌だろうから、テストには来るだろうけど」  先生の声が、どこか遠くから聞こえてくる。 (どうしよう……俺のせいだ)  自分のせいで園山がこのまま学校に来なくなってしまったらどうしよう。自分はきっと嫌われてしまった。せっかく友達になれたのに、もう口を利いてもらえないのだろうか。  そんな悪いことばかりが祥の頭に次々と浮かんできて、冷静に考える隙を与えてくれない。 「落ち着け井瀬塚。二人に何があったのかは知らんが、お前は思い詰めすぎだ」  先生の言葉にハッとして俯いていた顔を上げる。そのとき初めて彼がじっと祥を見つめていることに気が付いた。 「なあ、これからこないだの話の続きをするけど、覚えてるか」 「あ、ハイ」  こないだ、というのは祥が園山に暴力を振るおうとした日の放課後。先生に呼び出された時のことだろう。あのとき話の途中で優梨が入ってきてしまったことを思い出した。  一体どんな話だったのだろうか。  紫藤先生が口を開く。 「井瀬塚、お前は相手を思いやれる奴だ。見た目はチャラいが根は真面目。けどもちろん短所もある。一人で抱え込みすぎることだ。お前、溜め込みすぎるといつ爆発するか分からないしな。いつもならガス抜きの相手は筑戸だろうが、今は違うんじゃないか? 園山のせいでそんな風になってんなら、それ全部園山にぶつけて来い」 「――――っ」  聞いている間に、目の奥がどんどん熱くなっていった。  もしかしたら、祥はその言葉を待っていたのかもしれない。  ようやく決心がついた。 「……はい。ありがとうございます!」   そう言い終わらない内に祥は教室を飛び出していた。  先生の、廊下は走るなよ、という声は風と一緒にどこかに吹き飛んでしまった 。

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