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ビンゴ大会(遊技場『キッチュ』開催) 5
一方、老婆が準備を整えている間にトオルの傍を離れた『バトラー』は、巨大な透明ガラスの向こう側にいた。
その周りには、今まさにバニーガールコスチュームに着替えさせられているトオルを興味深げに見守る男女の姿がある。
トオルが連れてこられた建物は、壁の一部がガラス張りになっており、外から丸見えだったのだ。
しかもその巨大なガラス窓は、広場と呼べるような、観光客用の憩いの場に面していた。
当然、トオルが浣腸されているところも、トイレで腹痛に腹を押さえているところも、老婆に股間を洗われているところも全て丸見えだった。
目隠しされたままのトオルはそんなこととは露知らず、老婆にうさぎ耳カチューシャをつけられても、これは一体なんだろうという様子で小首を傾げている。
そんなトオルをガラス越しにステッキで指し示した『バトラー』は、よく通る声で口上を述べた。
「手前どもの『キッチュ』では、これからビンゴゲーム大会を開催いたします。紳士のための遊技場とさせていただいておりますので、申し訳ないのですがご婦人方はご入場をご遠慮くださいませ」
「さて、挑戦者はガラスの向こうにおりますこちらの雄ウサギ。ご覧の通り、すらっとした長い足がチャームポイントです。五回の抽選でビンゴが出なければ、こちらのウサギの勝ち。ビンゴが出れば、お客様の勝ちです。
ご参加いただける紳士の皆様は、こちらのビンゴカードをご購入くださいませ。手間どもがいただくのは、カードの代金の一割のみ。後は全てが賞金です。賞金は一抜けされた方の総取りとなります。
もちろん、五回の抽選では、一度に複数の番号が出る仕組みとなっております。五回でビンゴを達成するのは難しいですからね」
「なお、一抜けの方には副賞としてこちらのウサギを差し上げますので、末永く可愛がってやってください。さぁ皆さま、奮ってご参加くださいませ」
ガラスの前に群がっているのは、ほとんどが金に物を言わせて地上から遊びに来た資産家たちだ。口々に、五回のくじ引きでビンゴが出る確率について議論し合っている。
地上の娯楽に飽きた彼らにとって、見目良い男のガラス越しの醜態程度は今更見て驚くようなものではない。だが、それを客寄せのためだけに惜しみなく広場で晒している『キッチュ』の広告方法には、少なくない賞賛が集まった。
おかげで、『バトラー』の手元に用意されたビンゴカードは順調に売れていく。
カードには今はまだ何の数字も表示されていない。『ゲームで使用される数字の最大値』が現時点では不明のためだ。後ほど、自動で表示される仕組みになっている。
カードは一枚百万円で、下ル下ル商店街に来られるような伝手 がある金持ちたちにとっては、目新しいゲームに費やしても惜しくはない金額だった。
カードを買った者から順に、テントを模した店内に足を踏み入れる。高級感の漂う革張りの客席は、座席がゆったりと間を空けて扇状に配置されており、中央の空間が低く、扇の先端に行くに従って高くなっている。まさにサーカスのテントのような作りだ。
客席が八割程度埋まると場内の照明が落とされ、中央の低い空間にスポットライトが当たった。
そこへ、先ほど呼び込みをしていた執事風の男に二の腕を掴まれたバニーボーイが、よろよろとした足取りで現れる。
いよいよ、一人のギャンブル狂の人生をかけた、ビンゴゲームが始まる。
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