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第7話

「そういえば…涼さんって結婚するらしいね! 何かお祝いをしようか。」 そう話す円さんの言葉に 俺は鈍器で頭を殴られたような感覚を覚えた。 おめでたいはずなのに。 2人の結婚を邪魔するつもりなんてないのに。 何故か、苦しい。 そして俺がその苦しみがなんなのかを 理解するのはそんなに時間がかからなかった。 -俺は涼さんに恋をしていたのだ。 αの涼さんとΩの俺。 釣り合わないのも 一緒にいる事すら迷惑なのもわかってる。 それでも、好きになってしまったのだ。 …俺がその事に気づいたのは遅すぎたけど。 でも涼さんとの思い出は俺だけのものだから。 この思い出を大事にしよう。 …それくらい許されるよね? もし俺がΩじゃなかったら… 違う未来が待っていたのかな…? 涼さんが結婚すると聞いてから1ヵ月弱。 一度も涼さんはお店に来ていない。 もしかしたらもうここには 来ることはないのかもしれない。 そう思っていた…のに。 「いらっしゃいませ…って涼さん! お久しぶりです、元気にされていましたか?」 円さんの声に顔を上げると… そこには俺のよく知る涼さんがいた。 でもいつもより真面目なオーラを纏っている。 そんな涼さんは俺に気づくと 真っ直ぐ俺の所に来た。 「…お久しぶりです、どうかされまし…っ!」 流石に無視はできないと思い 当たり障りのない挨拶をしかけた時、 涼さんに抱きしめられた。 涼さんの香りが濃く感じられる。 「り、涼さん!?どうされたんですかっ!?」 と慌てる俺に 「好きです。」 とだけ言う涼さん。 「え…?」 「初めて見た時からずっと気になってて。 可愛い子だなって。男なのはわかってるよ。 でも可愛いなって思ったんだ。 それで少しでも俺の事を知って欲しくて。 聞かれてもないのに 自分の事をべらべらと話して。 きっと凄く迷惑だったよね? なんでこんな風になってるんだろうって 考えてみたら…好きな事に気づいたんだ! もし少しでも俺の事をいいなって 思ってもらえてるのなら付き合ってほしい。」 と涼さんに言われた。 あの女の人の事とかαとΩの壁とか 気になる事はたくさんあるけど 「はい、こんな俺でもよければ喜んで!」 そう返事をした。 -もし俺がΩじゃなかったら… きっと家出もしてないし 涼さんにも出会えてなかっただろう。 だからほんの少しだけ。 Ωでよかったと思ったんだ。 父さん、母さん。 俺、やっと本当の意味で 前を向いて生きていける気がするよ。 完。

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