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第6話

それは突然だった。 優菜ちゃんも涼さんも帰ってしまい お店に人がいなくなった頃。 「そろそろお店を閉めようと思うから」 って円さんが言うのを聞いて 俺はドアについている【open】の札を ひっくり返そうとお店を出た時だった。 「ねぇ。少しいいかしら?」 と急に声をかけられ振り向くと… あの女の人がいた。 涼さんとやたら仲良さげだった人。 「あ、あの…俺に何の用事ですかね…?」 そう聞けば 「ここで話せっていうの!?失礼な人ね!!」 と怒鳴られてしまったので俺は仕方なく 円さんに一言声をかけて その女の人と近くのカフェに入った。 カフェに入るとすぐに 「キャラメルモカ一つ。貴方は?」 そう言われ 「え、じゃあ… 抹茶ラテを一つお願いします。」 と飲み物を頼みその女の人は俺にむかって 「この間はあの女のせいだと思ったけど どうやら違ったみたいね。 本当の泥棒猫は…貴方だったのね!」 そう怒ってきた。 突然の事にどう対処していいかわからず 「え…? なんの事でしょうか…?」 と俺が聞くと 「とぼけるんじゃないわよ! 涼を誑かしたくせにっ!」 そう言われた。 え…? 俺が涼さんを誑かした? 「いや、俺、涼さんを誑かしてなんて…」 「はぁ!? よくそんな事が言えたわね!! これだからΩって嫌なのよ! 涼がαなのは知ってるわよね? 100歩譲って異性のαとΩならまだしも 同性でなんて… 釣り合わないのはわかってるでしょう!?」 どこで俺がΩだと知ったのかもわからないし 俺の言い方が気に触ったのか さらに怒り始める彼女。 もう何が何だかわからない…。 「俺、涼さんとそんなつもりで話した事なんて 一度もないですし…」 と俺が言うと 「へぇ… じゃあ、涼との結婚を 邪魔してるわけじゃないのよね? だったらもう2度と涼と関わらないで!」 そう言われまた少し胸が痛んだ気がしたが 「お2人のご結婚を邪魔するつもりなんて これっぽっちもないのでご安心ください。」 と彼女に言った。 …その日から俺は涼さんを避け始めた。 初めは話さない事になれず 少し苦しい思いもしたが 2週間も経つ頃になれば それはすっかりなれてしまった。 そして… 涼さんがあの女の人と結婚する という話を聞いたのは 店の片付けをしていた時の事だった。

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