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第5話
そして女の人がお店を出て行った瞬間
「はぁ…ごめんね、優菜ちゃん。
気を悪くさせちゃったよね?
これで許してもらえるとは思ってないけど
今日は僕が奢るから好きなだけ飲んでいいよ
あ!もちろん円さんと雛くんもね。」
といつもの柔らかい笑みと
優しい声色で涼さんは俺たちに言ってくれた。
今まで見ていた事が嘘に感じられるくらい
いつも通りの俺たちがよく知ってる涼さんで。
そんな涼さんに
「い、いや…
涼さんは全然悪くないし気にしなくていいよ?
確かに髪色とか服装とか
良くいえば個性的だけど悪くいえば変だし…」
って優菜ちゃんが言うと
「ありがとう…
でも僕は優菜ちゃんの髪色も服装も好きだよ?
優菜ちゃんによく似合ってると思う。」
そう優菜ちゃんに言う涼さん。
確かに優菜ちゃんの髪の毛は
紫のグラデーションでツインテールだし
服装も黒中心でぼろぼろのぬいぐるみが
プリントされたパーカーとか
ゴツめのチェーンがついたブーツとかで
普通とは少し違うかもしれないけど
全部が優菜ちゃんに似合ってるし
あの女の人が言ってた事は失礼だとも思った…
んだけど、優菜ちゃんの事を好きだと言う
涼さんを見て少し胸が痛んだ気がした。
…何故だかわからないけど。
その後はまたいつも通りの雰囲気に戻って
結局優菜ちゃんの分と
円さんそして俺の分の飲み物まで
涼さんは奢ってくれた。
ホントに俺まで奢ってもらっていいのかな?
とか思ってると
「今日の事は忘れて…とまでは
なかなかいかないかもだけど
また僕と仲良くして欲しいから
今日は奢らせてほしいんだ。
…雛くん、また僕と話してくれますか?」
なんて少し眉をたらして
涼さんに言われたら頷くしかなかった。
そしてもやもやを少し胸に残しつつも
その日は終わった。
あの日から1週間。
何事もない日常が続いている。
いつも通り俺は働かせてもらっていて。
優菜ちゃんや涼さんがお店に来てくれて。
円さんとたわいもない話をして。
だから俺は忘れかけていたんだ。
…彼女のことを。
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