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《7》

「利久は、俺の事嫌い…?」 「そ、それは…」 最初は、いけ好かない奴だと思っていたし、陰湿な嫌がらせをする嫌な奴だと思っていた。 好きになれと言う方が無理な話だと思う。 俺は思わず俯く。 「俺の事、好きじゃ無くても良い。これから好きになって貰うから」 そっと頬に手を当てて言い放つ良次に戸惑う。 何故そんな事、言い切れるのだろう。 何で、良次は俺なんかを好きだなんて言うのだろう。 混乱した頭では、思考が全然追いつかない。   「利久、好きだ」 「りょ、良次っ…」 「利久…、だから、触らして…」 「あっ…」 良次の綺麗な顔が近づいてくる。 唇が柔らかな感触に包まれる。 唇を食まれ、舌で舐られ、驚いて口を開くと、そのまま良次の舌に舌を絡め捕られる。 「んっう……」 もう抵抗出来ずに良次の口吻に翻弄される。 だって、仕方ないじゃないか。 俺は、恋愛なんてした事も無ければ、こんな風に愛を囁かれた事もない。 多分、ホモでは無いと思うけど。 今まで恋愛をした事もなければ、初恋も保育園の頃で止まっている。 だから、嬉しいなんて。 そう思ってしまうのは、俺が悪いからじゃない…。 口吻でぼやける思考回路で、必死にそう言い訳をした。

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