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《6》
こういう時、顔が良いとズルいと思う。
きっと、良次にそう言われた女の子は、皆喜んで頷くのだろう。
そう思うと胸が締め付けられた。
男に、こんな事を言われて嬉しいなんて…。
良次を独り占めしたいと思うなんて…。
俺は、おかしくなってしまったのかもしれない。
「利久…」
優しく頭を撫でられて、何故だか分からないけれど泣きたくなる。
この手を握り返したい。
もっと触れて貰いたい。
あんなに嫌だった、良次に触れられる行為が。
嫌じゃない。
良次が自分に触れる理由が、嫌いだからでは無く、好意を抱いているからだと知ったからかもしれない。
だけど、頭の何処かでこんなのはおかしいと警笛が鳴る。
男の自分が、こんな風に男に好きだと囁かれて、それに嫌悪感を抱いていない事にとてつもない違和感を感じる。
それなのに、良次に見つめられると何も言えなくなる。
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