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《9》*

痛いのに、苦しいのに、 それを凌駕する程に気持ち良い。 きっと、ショックでおかしくなってしまったんだ。 そうでなければ、あんな所に良次の昂ぶりを受け入れているのに、快感を感じている事の説明がつかない。 「利久…、すげぇ、イイ…お前ん中」 「あっ、あっ、んあっ」 「凄いな…、初めてなのに、感じてんの?」 「わ、わか…、はっ、あ、気持ち…すぎ、恐い…ああっ…!」 「良かった…、大丈夫だから、一緒に気持ち良くなろう…」 一緒に。 良次と。 一緒に。 気持ち良く。 頭の中で、囁かれた言葉が馬鹿みたいに反芻する。 「あっ、あっ…あ…」 壊れたCDみたいに、ただ喘ぎを繰り返す事しか出来ない。 本当は、 寂しくて、 心細くて、 何時だって泣き出したかった。 母さんが死んで、一人ぼっちで。 何処にも行く所なんか無くて。 良次に嫌われてると思っていた時も。 暴力では無い嫌がらせをしてくる良次に怯えていた。 だけど、それでも逃げ出さなかったのは。 時折良次がみせる僅かな優しさに、縋っていたからだ。 優しさに、飢えていた。

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