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《11》
「聞いてないっ!!」
「言ってねぇからな~」
学園祭当日。
俺は、優と対峙していた。
学園祭のクラスの出し物について、当日手伝えばいいやって聞かなかった俺が悪いんだけど。
内容が内容なだけに、優はもしかしてわざと当日まで教えてくれなかったのでは?と疑問が生まれる。
「お…」
俺はあまりの衝撃に、震える声で抗議した。
「俺達のクラスの出し物が、女装喫茶なんて聞いてないっ!!」
「い~じゃん、女装の一つや二つ減るもんじゃないし」
「減るとか減らないとか、そういう問題じゃねぇんだよっ!お、俺は絶対やんねぇからなっ!」
大体、俺みたいなガタイのいいむさ苦しいのが女装したって気持ち悪いだけだ。
いや、もちろんお笑い要員に間違いないんだろうけど。
いや、笑って貰えればまだマシだ。
俺には周りにドン引きされる未来しか見えない。
「って言ってもね~、男子は全員参加だから、これ」
「う゛~…」
唸ってみるけれど、優が怯む様子はない。
「売り上げ」
「え…、え?」
急に出てきた単語に、俺は何の事かと瞬きを繰り返す。
「トップのクラスのクラス委員の株、上がると思わねぇ?」
「……………」
「良次、喜ぶだろ~な~」
「……………」
「良次の役に立ちたくねぇ?」
優のトドメの言葉に、俺は押し黙る。
普段、何の役にも立てない俺が、初めて良次の役に立てるチャンスかもしれない。
「…………………や、やる」
気がつけば、俺はそう口にしてしまっていた。
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