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《43》

「そりゃ見るだろ。親友のライブなんだから」 「親友ね…」 声は爆音に掻き消されて、ほぼ聞こえない。 けれど、良次の口の動きを見て、大体何を言っているかは分かった。 ずっと一緒に過ごしていると、脳内補正されるのかなとか考えて、少し照れる。 「………が、………ってると………どな」 「…?」 その後に、良次が何か言った様な気がしたけれど、一瞬良次の顔が反れて、そこだけ分からなかった。 「利久…」 「…………え?」 不意に、良次が俺の手を握る。 今流れている曲はラブソングで。 ずっと片想いをしている相手に、言えない胸の想いを綴る曲だ。 好きで、好きで、けれど、関係を壊したくなくて、言えない言葉を、胸の奥で繰り返す。 関係が壊れたら、もう会えないかもしれない。 近くて、遠い。 こんなに近くにいるのに、見えない壁が、二人を阻んでいる。 そんな歌。 勇介が、毎回歌う曲だから、もう歌詞も全部覚えている。 視線が絡む。 男同士だとか。 子供の頃の約束とか。 再会した後の険悪な関係とか。 色んな事があった。 けれど良次は、全部全部壁を壊して、俺の心を攫ってしまった。

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