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《42》
「良かった!間に合ったよ!」
「勇介くん、カッコイイ~」
女子達に引き摺られる様にして会場に着くと、丁度ライブが始まる所だった。
「すげぇ人だな…」
「チケット即売れだったらしいよ!」
俺の呟きに亜希が答える。
会場はキャパオーバーなんじゃないかと思う位、ごった返していた。
これじゃあ、もしかしたら勇介が見えないかもしれないなと思ったけれど、他の女子が生徒用の場所を確保してくれていたらしく、大分前の方に行く事が出来た。
こういう時の女子の連携は凄いなと感心してしまった。
勇介がステージの上に立っている。
こんなにデカい会場にいっぱいの人。
勇介は、夢を叶えたんだなとしみじみ思う。
子供の頃からずっと一緒だった勇介が、今沢山の人達に元気を与えて、必要とされている。
寂しい様な、嬉しい様な、複雑な気持ちだった。
「随分、熱心に見るんだね」
爆音の中、微かな良次の声が届く。
弾かれた様に声の方を見れば、俺達の後ろにいた良次が、いつの間にか俺の隣りに肩を並べていた。
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