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paradox~勇介視点~
目の前が真っ暗になった。
心臓が嫌な早鐘を打つ。
俺から逸らされた視線が、利久の隣りの男に注がれている。
脳の中の後ろの方がジリジリと焼け付く様に痛む。
相手の男が、利久の手を取り、その手に口づける。
一瞬、息が止まり歌詞が飛びそうになる。
なぁ、利久。
そいつは誰?
お前って、そんな顔する奴だっけ?
子供の頃から、ずっと長い時間一緒に過ごしてきたのに、そんな顔一度だって見た事ねぇよ。
俺の知らない所で、いつの間にそんな感情を覚えたんだよ。
本当に好きで堪らないって、幸せで仕方ないって顔。
それを向けられている相手が、女の子だったら、素直に納得出来たんじゃないかと思う。
いつか、そんな日が来る事を、もうずっと前から覚悟していた。
だけど、今、利久が蕩けそうな位の笑顔を向けている相手は、俺が知らない男だった。
お前がさ、アイツの事が好きなら…。
男同士だからって、悩んで、悩んで、悩み抜いて、諦めた俺の気持ちは。
どうすればいい?
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