5 / 5

5魔草の種

 寝ている史暁を残し、ベッドから抜け出した友也は裸のまま窓際に歩み寄る。  消灯した室内を月明かりが薄ぼんやりと照らしている。  友也の視線は温度を持たず、静かに鉢植えに向けられていた。 「ふうん。こんなふうになっちゃうんだ」  昼間は瑞々しい蕾をつけていたはずのカラ・ダチュラソウは見る影もない。  一年前から放置されていたように、カラカラの茶色い枯草と成り果てていた。  鉢植えを持ち上げ、友也はベッドに引き返す。  そして史暁を起こさないよう、慎重にシーツを剥ぐ。  そこに──男の身体に戻った史暁の裸体が、横たわっている。  呪い──?  幻覚作用──? 「なんでもいいけど」  思ったよりも、簡単に史暁を手に入れられた。  それもそのはずだ。  女の身体が男を享受することは容易い。  男の身体が男を迎え入れるよりずっと。 「元に戻ったって、もう俺のものだよ。もし、受け入れられないっていうのなら──」  友也は鉢植えの中の枯葉を掻き分ける。  摘み上げた桜色の結晶は、自ら妖しく光を放っていた。 「またこの種を育てて『花』を見せてあげる──」  今度も女になるのかな。虫になるとかあるかな?  なんだっていいよ。  俺はね──  史暁がどうなったって────愛してあげる。  ── end ──

ともだちにシェアしよう!