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5魔草の種
寝ている史暁を残し、ベッドから抜け出した友也は裸のまま窓際に歩み寄る。
消灯した室内を月明かりが薄ぼんやりと照らしている。
友也の視線は温度を持たず、静かに鉢植えに向けられていた。
「ふうん。こんなふうになっちゃうんだ」
昼間は瑞々しい蕾をつけていたはずのカラ・ダチュラソウは見る影もない。
一年前から放置されていたように、カラカラの茶色い枯草と成り果てていた。
鉢植えを持ち上げ、友也はベッドに引き返す。
そして史暁を起こさないよう、慎重にシーツを剥ぐ。
そこに──男の身体に戻った史暁の裸体が、横たわっている。
呪い──?
幻覚作用──?
「なんでもいいけど」
思ったよりも、簡単に史暁を手に入れられた。
それもそのはずだ。
女の身体が男を享受することは容易い。
男の身体が男を迎え入れるよりずっと。
「元に戻ったって、もう俺のものだよ。もし、受け入れられないっていうのなら──」
友也は鉢植えの中の枯葉を掻き分ける。
摘み上げた桜色の結晶は、自ら妖しく光を放っていた。
「またこの種を育てて『花』を見せてあげる──」
今度も女になるのかな。虫になるとかあるかな?
なんだっていいよ。
俺はね──
史暁がどうなったって────愛してあげる。
── end ──
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