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4開花
「良かったねフミ。ちっちゃいけどフミのおちんちん、ちゃんとあるよ」
膝を立てた俺の股の間に身体を潜らせて、ありえない場所で友くんの声がしている。
「勃起してるの苦しそう。舐めてあげようか」
「やだ──っ、そんなの──」
ヌルリと生暖かく柔らかい舌にクリトリスが覆われる。
それは感じたことのない刺激で、弾かれるように腰が跳ねた。
友くんが身体で俺の片足に乗り上げるようして抑え込み、密着させた舌は円を描く。
敏感過ぎる肉の萌芽への刺激はそこからビリビリと全身を貫いて、波打つ身体を抑えられない。
「ひぁ、ふぁ……ん、んんっ、とも、くん……」
自分の声が甘ったるくて聞いていられない。
それでも止めることも出来ない。
「気持ち良い?フミは感じやすいよね。見てる方まで気持ち良くて──すごく、いやらしい事したくなる」
「も、して──る──っ」
「うん。してるよね。でも、もっと──」
友くんは唇で器用にプチュプチュと陰核を摘み上げながら、指で膣口を撫でる。
どうにかなりそうな期待で痛いほど腹の奥が疼く。
早く、と口にしてしまうのを堪えなければならなかった。
「っは、ああ……う……ん」
「ホント……気持ち良さそう。どうして欲しい?舐めながら、ここにも挿れちゃう?」
「ふ、や……だ……」
「じゃあ、やめておくね」
事も無げにそう言い、また尖った肉を口に含む。
舌先でしこりをほじるように掬い上げながら、蜜の溢れ返る入り口で指をクイクイと引っ掛けて揶揄う。
「ん、んん──」
「ほら我慢しないで、してって言って。クリトリス舐められながら、膣内 でクチュクチュされたくない?気持ちいいよ。言ったらしてあげるから」
「ふーっ、んぅ……っ」
「……なんてね。俺じらすの得意じゃないんだよね。早く気持ち良くしてあげたくなっちゃうから」
コリコリにしこった陰核に吸い付きながら二本の指が膣口を割る。
爪が隠れる程度を、指先に侵入された。
──やっと貰える……。
過度な期待でいやらしい蜜壺はギュウっと収縮する。
だけど侵入口を軸にして押し広げるように、ゆっくりと丸く動くだけで這入ってこない。
深度の全く足りないそこで愛撫を始めたみたいだった。
まだ……まだ全然足りないのに──。
これで得意じゃないとか、よく言える。
もう限界だった。
「友くん、っ焦らさ、ないで──もっとちゃんと……奥まで……挿れて」
「焦れたんだ──かわいい。いいよ、フミの欲しいもの、いっぱいあげるね」
太い指が、肉壁を擦りジュププッっと一気に奥まで届いた。
それまでのスローペースはなんだっとのかと思うくらいに、手首を遣ってジュポジュポと激しく音を立てられる。
「あ、は、ゆび……っ、ゆび、すご……っ、すご……いっ」
「ん──ふ、っん」
舌と指で追い責められながら、俺はもう絶頂から逃げられないことを知る。
「あ……ダメっ、とも、っん……おれ、きもちいくて……イッちゃう……よ、ぉ……」
返事の代わりに友くんはクリトリスをジュルジュルと吸い上げる。
絶え間なく出し入れされる指に応えるよう無意識に腰を動かして、強すぎる快感の終わりを求めた。
下半身がとろけてどこが良いのか判別がつかない。全部が性感帯になって、いやらしくうねっている。
「ふ、あ、んっ、んんっ、あ──」
ひときわ大きな快感の波が俺の感覚全てを攫っていく。
きもちいいきもちいいきもちいい──。
友くんの指の一本一本の感触が分かるほどに、勝手に膣内 がきつく締まる。
その収縮に反発するようにグイッと強く肉壷をえぐられ、背中がしなる。
そして幾重にも押し寄せる官能の喜悦に、身体をガクガクと痙攣させた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
三本の指の挿入と、陰核への攻撃としか思えない舌での刺激で、俺は何度めかの絶頂を迎えされられている。
「また──イッちゃったの?女の子になったばかりなのにイきやすいよね。えっちな身体」
「そんな、こと──」
「あるよねー」
クリトリスをざらざらした舌で舐め上げられて、自然に腰が持ち上がるのを止められない。
すでに快感を受け入れる事に慣らされすぎてしまっていた。
「ほら押し付けてくるんだもん。でも俺やらしい子、大好きだよ」
友くんはよっぽどセックスに慣れているんだと思う。
もうずっとこんな調子で俺の身体を弄ぶばかりで終わらせる気配がない。
自分は一度もイッていないのに興奮に我を忘れる風でもなく、残酷に俺を喘がせ続ける。
「っも、やだ──終わりに、して──」
「それは酷いよ。俺まだ挿れてないのに」
両手を使って膣口を大きく広げられる。
顔を近づけられているようで息遣いを感じた。吹き掛けられているのかもしれない。
「ふ、っあ、そこ、開けるの……やだ……っ」
いつになっても満たされないもどかしさで内股に力が入り、寄せた膝が震える。
「どうして?挿れて欲しくなっちゃう?そうだね。そろそろ大丈夫そうだね。──でも女の子って皆おなじなんだね」
その言葉はなぜか俺の心を引っ掻き、思わず尋ねる。
「同じって……なにが……」
「うーん。ココをね、広げてあげると、ヒクヒクしながらお汁が溢れてくるの。フミも一緒だね。挿れて欲しくて堪らないから、こうなっちゃうんでしょ。みんな、いやらしくてかわいいよね」
ジクジクジクと胸の中に気持ち悪いものが湧き上がった。
──友くんはやっぱり今まで色んな人とセックスしてる。俺はそれと並べられてる……。
すごく、嫌だ。
「一緒じゃ、ない……一緒に──しないでよ」
今していることが友くんにとって特別でなければ──これの意味は、なんなんだ。
女の身体であれば相手は誰でも良くて、単に俺も性欲の対象になっただけ?そんなのあまりに酷すぎる。
「あれ。焼きもち妬いてくれてるの?うれしい。だったらね──フミのここ──俺がいつでも好きな時に使って良い?」
「な……ん」
友くんは何を考えてる……?
使うってなんだ。
どうして、そうなるんだよ。
「……そん、そんなの──やだよっ」
「そうかぁ、そうだよね。いいよ。セックスは他の子とすればいいんだからね。今までもそうなんだから。でも──俺がフミを好きなのは信じてね」
なんでそんな事が言えるんだ。
なんでそれで好きだなんて言えるんだ。
俺をどうしたいのか全然分からない。
それは俺だって……同じだけど。
俺も俺がどうしたいのか、分からない。
だけど感情にはどうしても嘘がつけない。
「やだ」
「なにが嫌なの?」
「………やなんだよ」
「うん。なにが?」
友くんの身体が俺に寄り添って横たわった。
答えを急ぐわけでもなく、触れたと思ったキスはすぐに舌を絡み付けられ、下半身に伸びた手がひだの間へ潜り込みながら降りてきて、指全体を使いソコをかき回される。
途端にグチュグチュと淫猥な音で溢れた。
弱々しく肩を押し返してもなんの意味もなく、逆に片手を肩に回されキスをしたままグイッと引き寄せられる。
「んぅ、んっん──」
ずるい。そんなふうにされたら何も考えられなくなる。
「友、くん……っ、が、他の人……と、しちゃ、やだ──」
「そんなワガママ言って。だったら俺は誰とセックスすればいいの?」
何度もイかされて敏感になり、硬く勃ったままの陰核を友くんの指がまさぐった。
露出させられ膨らんだ先端を愛液のぬめりを使ってこすり続けられる。
「っあ、あ、ああ……、っお、俺、俺と……して、いいか……らっ……」
「そんな高飛車な態度じゃ、言うこと訊いてあげられないなー」
今すぐにでもイきそうなくらいに快感を与えられ、達しようとすると寸止めを繰り返された。
もう頭の中は、イきたい、ただそれだけだ。
「史暁のえっちな穴をいつでも使って下さいって、お願いして」
「ん、あああっ……お、俺の……えっちな穴……いつでも使って、くだ、さい……」
「あは。かわいいねフミ。じゃあ使ってあげる」
「っっあ、イく、イく──んんんっっ。──え、や、うそ──っんぅぅ」
信じられないことに、言わされた『お願い』が行使されたのは、たった今イかされたその瞬間、だった。
カサが大きく張り出しゴツゴツと根本まで太い──男の俺が見てもエグいペニスが閉じた膣内を抉じ開けて、ずぶずぶと挿入 ってくる。
「だ……め、むり──まだ……イって、る……」
「っは。キツ……。閉じてるとこ……俺が拓いていってるの……わかる?こんなの、我慢できない。全部、挿れちゃう──ね……っ」
「んあ、っ、ああああんっ、すご……ナカ、こすれる……熱、い……んっんっぁ──」
膣口が限界まで広がっているのが分かる。本当は痛みを感じているのかもしれない。
だけど、それ以上に──待ち望んでいた欲望と熱で、空洞を埋められた快感は凄まじかった。
身体が、腟内 が、勝手にペニスをきゅうきゅうと締め付けてその巨 きさを味わい、快楽を貪る。
視界が急激に狭くなったのも、気持ちが良すぎるせいだ。
アドレナリンが脳内で一気に放出され、クスリがキマってしまったみたいに──身体がだらしなく弛緩する。
涙も、唾液も、魂も、なにもかもが溢れ出す。
「あー、もう……そんなに、悦くなってるんだ。処女のくせにエロすぎるよね。フミは俺が思ってたより淫乱だよ。嬉しい誤算ではあるけど」
だってこんな波に飲まれるような快感は知らない。
この身体だからなのか。
男の精を絞り尽くすための器官に快感だと思い込まされているのか──。
「こんないやらしい身体見たことないな。まだ動かないであげてるのに、俺をもっと奥に俺を引きずり込もうとしてるよね。もう我慢できない?子宮、早く突いて精子注いで欲しい?」
初めから返事を期待していないのか、友くんはゆっくり腰を遣い始めた。
のろい動作で膣内の粘膜を、弾力のある硬い塊がねっとり撫でこすっていく。
それは切ないくらいもどかしく子宮が締め付けられるような感覚で、そうすれば俺が堪らなく欲しくなることを友くんは知っている。
抗うことなんて出来なかった。抗おうとさえ考えなかった。
「──っん、っく、友くんもっとぉ。友くんのもっと欲しい。もっと動いて、おく……ぶつけて……っ」
「欲しがるんなら、ちゃんと飲まなきゃだめだよ?生で出してあげるから。一滴も──こぼさないでね」
飲む……ああ──そうか。そういうことか。
でもこの身体でそんなことしたら──。
友くんが俺の両足を抱えて大きく開き、亀頭の先端が抜けるギリギリまで腰を引いて、深く一気に突き挿れた。
目の奥に火花が散って腰の最奥から全身に、甘すぎる愛おしさが広がっていく。
息を切らせながら容赦なく、友くんは荒々しい抽挿を繰り返す。
グチュン、バチュンと激しい水音をたて子宮の奥をえぐられる。
引き抜かれるたび体の一部が奪われるような切なさが込み上げて、その一瞬後にまた与えられる。
この寂寥感の正体はなんだろう。肉欲だけでこうはならない。
友くんにしても理性を失い溺れているというよりは、まるで飢えと渇きに耐え兼ねて欲望を叩きつけているように見えた。
牙を剥き出す獣のような友くんを下から見上げながら、涙が膨れ上がって流れ落ちていく。
これが──この身体の因果なのかどうかは分からない。
俺を追い詰め無理やり求めさせ、非情なまでに犯し尽くそうとするような男なのに──、
抱きしめて──キスして欲しくて仕方ない。
「っ、く。あ……だめ、すぐイきそう。俺はフミが好きだから、こんなに気持ちいいんだよ──フミは、違うよね。でも、いいよ。このいやらしい身体を俺なしじゃいられなくしてあげる。だからいっぱいしよ。孕むまで、しようね。フミ──」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とつぜん災難というしかない事態に見舞われ、心細く不安ばかりの俺が、唯一信じられると頼った男は俺を犯した。
口にした好意が本物であっても犯す理由になんてならない。
ひどい仕打ちをされた。
そんなこと分かりきっている。
俺は友くんを軽蔑してもいい。
俺が友くんに感じてしまったせいなのか。
あれだけ遊び慣れた友くんなら、女をイかせるなんて造作も無いことなのに。
嫌悪できないなんて──甘すぎる。
湧き上がった、ふさわしい言葉のない感情を、どう捉えていいか分からない。
友くんが俺に与えたのは肉体の快楽だけなのか……?
友くんが俺に求めるのは肉体の快楽だけなのか……?
どうしてもそうは──思えなかった。
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