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第15話
「星名!!」
大声で呼ばれて振り返った。
「追いつけて良かった。カバンと傘……」
息を切らして、雨宮が走ってきた。ワザワザ持ってきてくれたのか。
「……店は?」
「キッチンの人にお願いしてきた。それより、さっきの本当……?」
真顔で問いつめられて、自分の息をゴクリと飲んだ。一気に緊張が走る。
確かに言い逃げなんて男らしくなかったな。
「雨宮の事が好きだ……」
目を見て、本心を伝えた。次は隠したりしない。誤魔化さずに伝えて、ちゃんと振られてやろう。
「………………嬉しい」
ポツリと雨宮が呟いて、意味が分からず呆然とする。
「俺の片思いだと思ってた。まさか星名が告白してくれるなんて…… さっきは驚き過ぎて、すぐに返せなくてごめん」
「ま、待てよ。お前、彼氏いるんだろ!?」
「彼氏?」
「カフェのケーキ職人!髪が派手な奴!」
「…………飯山?ただの同僚で彼女もいるよ。 ごめん。その、恋人の話は嘘なんだ。だって……星名、再会したら更に格好良くなってるから。」
雨宮がポッと赤くなる。
「毎日、カフェに来て俺に笑いかけてくれるし…… 星名、相変わらず優しいから……会う度に……俺…… でも、同時に怖くて。きっぱり振られたのに未練があると思われたら、会えなくなるかもしれない……と咄嗟に嘘を」
何それ……
「恋人はいない?」
「…………ごめん。俺、恋人いた事、1回もなくて……キスもさっきのが初めて……」
「は……初めて……」
その言葉に思わず息を飲む。
雨宮の目に涙がたまり、ゴシゴシ擦ってる。
「ち、違うんだ。ビックリして涙が…… 片思いでも……会えるだけでも十分だと思ってたのに…… 今頃、実感が………ごめん。嬉しくて……自分でも何を言ってるのか……」
雨宮が恥ずかしそうに泣きながら話してる。
…………雨宮も俺が好き?
あの日と同じ雨と涙。
でも、あの日と違うのは……
「俺と付き合って……」
「うん……」
雨宮が涙目で幸せそうに笑った。
「キスしていい……?」
頬に手を置き、顔を近付ける。
「だ!ダメ!ひ!人に見られちゃうから!」
慌てて真っ赤になる雨宮が可愛くて思わず、ニヤけてしまう。
「星名、濡れてるし風邪ひく…… とりあえず店に戻ろう。」
躊躇いがちに真っ赤になりながら、ギュッと腕を掴まれた。そのまま手を握ると、雨宮は何も言わず、滅茶苦茶照れてる。
相合傘で手を繋いで二人で店に戻った。
「星名。ありがとう……」
上目遣いで礼を言う雨宮は可愛くて、思わずキュンとする。
傘を深めに下げてもう一度、キスをした。多分、雨と傘が俺達を隠してくれる。傘で人に気付かれないのをいい事に、2回、3回、繰り返す。
「……星名。人が」
雨宮の頬が真っ赤に染まる。こんなに可愛いのに全部、初めてなのか……
「…………可愛い顔してると襲うよ。」
「え!?なっ……!?」
雨宮はまた挙動不審になってる。
大嫌いだった雨。
今日も激しい雨音が響く。
「最後にもう一回……」
幸せな気持ちで唇を重ねる。優しく触れて指を絡ませた。
雨の日も悪くないかも……
………………そんな気がした。
END
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