15 / 15

第15話

「星名!!」  大声で呼ばれて振り返った。 「追いつけて良かった。カバンと傘……」  息を切らして、雨宮が走ってきた。ワザワザ持ってきてくれたのか。 「……店は?」 「キッチンの人にお願いしてきた。それより、さっきの本当……?」  真顔で問いつめられて、自分の息をゴクリと飲んだ。一気に緊張が走る。  確かに言い逃げなんて男らしくなかったな。 「雨宮の事が好きだ……」  目を見て、本心を伝えた。次は隠したりしない。誤魔化さずに伝えて、ちゃんと振られてやろう。      「………………嬉しい」  ポツリと雨宮が呟いて、意味が分からず呆然とする。 「俺の片思いだと思ってた。まさか星名が告白してくれるなんて…… さっきは驚き過ぎて、すぐに返せなくてごめん」 「ま、待てよ。お前、彼氏いるんだろ!?」 「彼氏?」 「カフェのケーキ職人!髪が派手な奴!」 「…………飯山?ただの同僚で彼女もいるよ。 ごめん。その、恋人の話は嘘なんだ。だって……星名、再会したら更に格好良くなってるから。」  雨宮がポッと赤くなる。 「毎日、カフェに来て俺に笑いかけてくれるし…… 星名、相変わらず優しいから……会う度に……俺…… でも、同時に怖くて。きっぱり振られたのに未練があると思われたら、会えなくなるかもしれない……と咄嗟に嘘を」  何それ…… 「恋人はいない?」 「…………ごめん。俺、恋人いた事、1回もなくて……キスもさっきのが初めて……」 「は……初めて……」  その言葉に思わず息を飲む。  雨宮の目に涙がたまり、ゴシゴシ擦ってる。 「ち、違うんだ。ビックリして涙が…… 片思いでも……会えるだけでも十分だと思ってたのに…… 今頃、実感が………ごめん。嬉しくて……自分でも何を言ってるのか……」  雨宮が恥ずかしそうに泣きながら話してる。  …………雨宮も俺が好き?  あの日と同じ雨と涙。  でも、あの日と違うのは…… 「俺と付き合って……」 「うん……」  雨宮が涙目で幸せそうに笑った。 「キスしていい……?」  頬に手を置き、顔を近付ける。 「だ!ダメ!ひ!人に見られちゃうから!」  慌てて真っ赤になる雨宮が可愛くて思わず、ニヤけてしまう。 「星名、濡れてるし風邪ひく…… とりあえず店に戻ろう。」  躊躇いがちに真っ赤になりながら、ギュッと腕を掴まれた。そのまま手を握ると、雨宮は何も言わず、滅茶苦茶照れてる。  相合傘で手を繋いで二人で店に戻った。   「星名。ありがとう……」  上目遣いで礼を言う雨宮は可愛くて、思わずキュンとする。  傘を深めに下げてもう一度、キスをした。多分、雨と傘が俺達を隠してくれる。傘で人に気付かれないのをいい事に、2回、3回、繰り返す。  「……星名。人が」  雨宮の頬が真っ赤に染まる。こんなに可愛いのに全部、初めてなのか…… 「…………可愛い顔してると襲うよ。」 「え!?なっ……!?」  雨宮はまた挙動不審になってる。  大嫌いだった雨。  今日も激しい雨音が響く。 「最後にもう一回……」  幸せな気持ちで唇を重ねる。優しく触れて指を絡ませた。    雨の日も悪くないかも……  ………………そんな気がした。 END

ともだちにシェアしよう!