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第14話

 考えるより先に体が動く。雨宮の腕を引っ張り抱きしめた。  雨宮が俺の腕の中にいる……  堪らない気持ちで背中に回した手に力を込めた。こんな乱暴に抱きしめて雨宮はどう思ってるだろう。 「ほ……星名……?」  早過ぎる心臓の音がうるさい位、鳴ってる。  雨宮に気付かれたくなくて……  ………………気付いて欲しくて。  覚悟を決めて雨宮を見つめる。目が合った瞬間、雨宮は今までにない位の真っ赤な顔をした。それを見たら、もう駄目だった。  ………………雨宮が好き。  肩を引き寄せ、唇を奪う。  一方的なキス。 「お前が好きだ。友達以上の感情を持ってる。雨宮に会いたくてカフェに通ってた」  曝してしまった俺の胸のうち。友達面してカフェに通ってた事も全部、言ってしまった。 「星名……」  揺れる瞳、戸惑うような表情。雨宮は驚いた顔をしてる。  雨宮は真面目な奴だ。付き合ってる恋人がいるのに俺とどうにかなる事はない。  ………………分かってたよ。  だから、気付いても言えなかった。 「ごめん。忘れて……」  傘も持たずに外に飛び出した。  外は大雨。一瞬でスーツは濡れて重くなる。 傘もささず、びしょ濡れな俺に、道行く人が次々と振り返った。そりゃそうだ。この雨で傘がないのはおかし過ぎる。  颯爽と立ち去るつもりが信号は赤。土砂降りの雨の中、交差点で色々な人にジロジロ見られる。  傘だけじゃない。パソコンも置いてきてしまった。後で取りに行かなきゃいけないのか。最後まで格好悪い……  …………言うつもりなかったのに。  困らせるの、分かってたから……

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