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第13話
「甘いのも好きならケーキ食べる?うちの、美味しいよ。」
アイツが焼いたケーキか。雨宮が勧めてきて、一気に面白くない気持ちになる。子供っぽいかもしれないけど、食べたくない。
「…………いらない」
自分でも驚く程、冷たい声で返してしまった。雨宮は意味が分からず、少し困った顔をしてる。でも、膨れがる嫉妬を抑えられず、余計な何かを言ってしまいそうになる。
客として、友達としてごく普通の会話だろう。分かってる。ただの八つ当たりだ。でも、アイツの話はしないで欲しい。
『俺といる時位、他の男の話はしないで』そう伝えたら、どんな顔をする……?
言ってしまいたい。『お前が好き』だって。
「ごめん。今日は帰るよ」
パソコンを閉じて、席を立った。
「仕事していかないの?」
「うん」
「ご……ごめん。俺、何か」
不安そうな雨宮を見つめた。
「別に。そろそろ、会社に戻らないといけないんだ。」
なるべく明るい声で返し、伝票を持って席を立ち上がる。
最近、自分の気持がセーブ出来ない。店に通うの、やめた方がいいかもしれない。
会計を済ませ、逃げるみたいに雨宮に背を向けた。
「星名!」
雨宮の声に立ち止まる。ゆっくり振り向くと、雨宮はなんだか泣きそうな顔をしてた。
「あの。また……来てくれる……?」
何かを感じたのか、雨宮は緊張しながら聞いてきた。
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