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第25話
side晴海
春休みがあと数日で終わるという日、僕は学校にいた。
新学期と入学式の準備をするためだ。
放送委員会に所属しているため生徒会役員や各委員会のメンバーとの打ち合わせがあるのだ。
「は~る!」
「ひゃあ」
後ろから急に腰を引かれ、大げさに驚いてしまった。
もう少しでマイクケーブルを落とすところだった。
長いケーブルは重量もそこそこある。足の上に落とせばそれなりに痛い。
「ん~いい反応」
「都丸(とまる)離れて」
そのまま腰にまとわりついている。
「久しぶりに晴を充電する~」
都丸誠司はこの学校の生徒会長だ。190近い身長と筋肉質な体格を持つ彼なのだが、何故か僕にまとわりついてくる。
「ほら、もう会議だから1-Bの教室に行って」
「ん~行く行く」
「東儀に見つかると面倒になるよ」
「あー、そうだね…」
東儀一心(いっしん)は生徒会副会長で面倒な雑務を会長に代わって引き受けている。ゆえに都丸は東儀に頭があがらない。
「晴、久しぶり…」
と言っているそばからイケメン副会長に見つかってしまった。
「誠司、とっとと来い!」
「やばっ」
都丸は脱兎の如く走り出したが、一足早く東儀がタックルをかまし、あっけなく捕まった。
170を少し越えた位の僕と体型はそんなに変わらないように見えるが、東儀のほっそりとした身体から生み出される瞬発力は見かけ以上に強力なようだ。
「さ、行こうか」
スマートなイケメンが大男を連行していく…。
(さ、僕も行かないと)
ケーブルを物品庫に戻し、1-Bへ向かった。
会議があっさり終了したので、最寄り駅の二つ手前で電車を降りた。
(本屋に寄って参考書を見ていこう)
平日とはいえ春休みが終わっていない街中は、人であふれている。
僕は繁華街の中にある大型書店に向かう途中で凪を見た。
(あれ?)
誰かと一緒だ。
休日に出歩くような友人がいたのか。
心臓が強く胸を打つ。
思わず追いかけた。
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