24 / 179
第24話
side凪
売店でもふもふ耳のカチューシャを買った。
もちろん晴くんに着けてもらうためだ。
少し抵抗されたが、ここは夢の国だからと説得したら、しょうがないなと言って着けてくれた。
通りすぎる人達が、もふもふ耳を着けた晴くんをチラチラ見ている。
人目がなかったら抱き締めたい位可愛い。
そのままの姿で次々とアトラクションに乗った。
もちろん晴くんでも乗れそうなゆる~いものばかりだ。
激しめのものにも乗りたかったが、好きな人とのデートはそれだけでモチベーションがあがる。
やがて暗くなり、夜のパレードが始まると晴くんと手をつないだ。
暗いから離れていかないようにと言ったけど勿論建前で、夜に紛れてイチャイチャするためだ。
晴くんは夢中になってパレードの山車を見ている。
俺はそんな晴くんを見て頬がゆるんだ。
つないだ手をそっと外し、肩に手を回す。
(嬉しい。恋人っぽい)
でも〈仮・恋人〉ではなく恋人になりたい。
愛を囁いて、晴くんを甘やかしたい。
今だけ、このパレードが終わるまでは 仮でもいい、〈恋人〉でいさせて…。
side晴海
夢の国にいる間だけ、と言われてついにカチューシャをつけてしまった!
しかも猫耳!モフモフ!
周りからの視線が痛い…。
ジェットコースターで気分が悪くなったおかげか、凪は穏やかな乗り物だけを選んでくれた。
そのせいか周りはカップルか親子連れ…。
僕らはどういう風に見られているのだろう…。
凪に申し訳ない。ホントなら可愛い女の子が凪の隣に立つべきなのに…。
あっという間に辺りは暗くなり、パレードが始まった。煌びやかな衣装を纏ったダンサー達が華麗に踊る。キャラクターの山車も見事な電飾で飾り付けられて、まさに夢の国にいるようだ。
夢中になって見ていたら繋いでいた手はいつの間にかほどかれ、凪に肩を抱かれていた。
ここは夢の国。
パレードの光が滲んで零れた。
ここにいる間だけは、凪と恋人ごっこをしていられる。
凪の隣に立つべきは僕じゃない。
悟られないように指で涙を拭った。
兄の僕では、凪の隣に立つのに相応しくないのだ。
パレードが終わり、煌びやかな夢の国の魔法が解ける。
「凪、帰ろう」
ここを出たら、今まで通りの兄と弟に戻るのだ。
ともだちにシェアしよう!