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第23話
side凪
ジェットコースターで並んでいた時から、こちらに向いた意味ありげな視線には気づいていた。
(晴くんの可愛さ故、致し方ない)
そう思っていた。
だがきこえてきた会話は別のものだった。
『…だから違うって』
『どう見ても背の高いコの方だよ』
『可愛いコの方が萌える』
(?)
『大きい子が襲われるのもいいけど、王道は可愛い受けちゃんだよ~』
(もしや噂に聞く腐女子…)
未知の生き物に遭遇して若干血の気が引く。
確かに脳内で思い描く不埒な行いは腐女子の妄想そのものだ。
(思い描くどころか実際…)
(…今日は晴くんのことだけを考えよう)
列が進みだした。
「晴くん、遅れちゃうよ」
わざとよく見えるように晴くんの手を取った。
腐女子達の目が輝く。
あ~間違いないな。
本当は晴くんの可愛い姿を見せたくはないのだが、テーマパークデートというシチュエーションも悪くない。
もうちょっと刺激してみる。
今度は晴くんの背中に手を置き、エスコートしている風を装った。
「ほら、列が進んでる」
「あ、ホントだ」
前にいる女子達の視線が一斉にこちらに向く。
ヒソヒソ話が加速しているようだ。
俺はこのまま晴くんとジェットコースターに乗り込んだ。
「晴くん、平気?」
ジェットコースターは楽しかったが、晴くんは気分が悪そうだ。
「…うん、ちょっと休ませて」
ベンチに座らせて自分にもたれかける。
さっき前に並んでいた女子達が、遠くからこちらを見て激しく喋っている。
「?」
晴くんは何故見られているのかわからないって顔をしている。
「ああ、あの子達ね。腐女子だよ。俺と晴くんがデートしてるって思ってるみたいだよ」
デート、と言ったらみるみる晴くんの顔が赤くなってきた。
なんて可愛い!
「そんなカワイイ顔、外でしないで」
耳元で囁いた。
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