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第80話

side凪 晴くんが裸のまま腕の中にいる。 乱れた髪を撫で付け頬をするっと撫でた。 「んっ…」 俺の方に向かってぐいぐい来たが、ぱたっと動きが止まる。 ひとつ、晴くんの髪にキスを落とした。 ずっと晴くんが欲しかった。 今すぐではないけど、父さんと母さんには俺たちのことを話したい。 きっと分かってくれる。 俺は晴くんと生きていく。 side晴海 「凪、ほら行くよ」 玄関の扉を開けると、まだ寒さの残る冷たい風が吹き込んできた。 家を出る時間が迫っている。 「今行くって、晴」 凪が慌てる風もなく答える。 この春、凪は僕の通う大学に入学した。 実家から少し離れた場所にあるため、僕は大学に入ると同時に家をでた。 そこに凪が転がり込んできたのだ。 父さんと母さんには僕が家を出るタイミングで凪とのことを話した。 反対されることは無かったけれど節度ある大人の対応で、と釘を刺された。 母さんは多分、気づいていたと思う。 僕らのために父さんを説得してくれたから。 「晴、お待たせ」 凪が笑顔で僕の頭に手を置き、くしゃりと髪を混ぜた。 「凪、遅いよ」 僕も笑顔で応える。 春の風に乗って、僕と凪の新しい生活が始まる。 『僕と彼の恋愛事情』高校生編 おわり

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