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第16話 『直×拓編』

side直樹 「ありがとう。それとゴメン。こんなにみっともない姿見せて」 こんなに泣くなんて…。 「…何があった?」 「…」 涙が頬を伝い顎からぽつっと落ちる。 「言えない…?」 晴くんの目を覗き込むように見つめた。 「…僕が…」 晴くんが話し始めると止まりかけた涙がまた溢れだした。 「…ひっく…勝手に好きに…なっ…たんだ…」 「…うん」 …片思い…? 「で…でも…恋人が…い…て…うっ」 「…うん」 …失恋…? 「諦め…ようと…ひっく…でも…」 「……」 「…でも…こ…恋人が…同性だって…わかっ…て…」 「……」 それって……ただ振られるよりずっと辛いことなんじゃないかな? 「うっうう…」 自分の腕の中で子供のように泣きじゃくる晴くんの髪を慰めるようにまぜた。 胸の中で眠ってしまった晴くんを家に連れ帰った。 送り届けようとも考えたが何故かそうしたくなかった。 自分のベッドに寝かせると晴くんの目元がすこし腫れていることに気がついた。 まぶたの上に濡れタオルを置いて白い頬と唇の輪郭を指でたどった。 目が腫れるくらい泣くなんて…。 こんなに感情をあらわにする人だったんだ。 俺の知らない晴海…。 晴くんが布団の中でモゾモゾと動く。 「…ん…」 「あ、起きた?」 「直樹…」 ビックリした顔をして体を起こし俺を見る。 「晴くん眠っちゃったから…勝手に連れ込んだ」 「…つ…連れ込んだって…」 急に顔を真っ赤にして…でもまた…晴くんの目から涙が落ちた。 「まだ泣いてんの?どんだけショック受けたんだよ…」 「ご…ごめん…」 「泣き虫になっちゃった?」 こんな晴くんを一人に出来ない。 晴くんを力強く抱き締めた。 「んっ…」 「晴くん、感じちゃったね?」 「え…?」 この愛らしい人を離したくない、そう思った。

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