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第15話 『直×拓編』

side直樹 「三年ぶりに親父の転勤でこっちに戻ったんだ」 「そんなにたった?どこの高校に行くの?」 「晴海くんと同じだよ」 晴くんの制服に付いている校章を指で弾いた。 「学校が始まったらヨロシク、先輩」 「何言ってるんだよ」 晴くんが昔と同じ笑顔を見せた。 入学式当日、父は半休を取って見に来てくれた。 式の後は簡単な学活で今日は下校。 父は俺とゆっくり昼食をとってから出勤した。 その後はウインドウショッピングをしながら繁華街をぶらぶらと歩いた。 すると慌てた様子で走り去る男子がいた。 見覚えのあるその人は…晴くんだった。 我を忘れて人の群れに逆らい、まるで自分を見失っているようだ。 気づいたら後を追っていた。 陸上競技は得意だ。 すぐに晴くんに追い付き、その腕を掴んだ。 「すげー勢いで走って来て…何が…あったの…?」 全速力で走ったせいで息が上がる。 「…はぁ、な…何も…な…い」 そんな事はない。 涙が頬を伝っている。 「ばか、そんな顔すんな」 晴くんの泣き顔を見て、胸が締め付けられる。 ぎゅっと抱き締めた。 「うっ…うぅ…」 背中に回した手に力がこもる。 とたんに声をあげて泣く晴くん…。 「少し移動しよう」 このままじゃ人目につきすぎる。 俺は晴くんの手を引いて近くの公園に向かった。 幸い公園に人影はなく、俺はベンチに座り向かい合わせになるように晴くんを膝にのせた。 まだしゃくりあげる晴くんの背中を小さな子供をあやすようにトントンすると胸に凭れかかってきた。

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