6月6日（木）22:15　最高気温26.5℃、最低気温17.3℃　晴れ 　動物番組を見るのが好きだ。 　小さな鍋の中に次から次へと入っていく子猫の映像に目を細めていたところに、風呂から上がってきた樹がやって来た。条件反射的に「何か飲む？」と立ち上がる。入れ替わりに樹がソファに座って、リモコンに手を伸ばし……でも、チャンネルは変えずにそのままにしておいてくれた。日向がこの番組を好きだということを、覚えててくれていたみたいだった。 「可愛いよね」 「ああ……」 「これ、いつも本当癒やされる。アルパカ特集もよかったけど、やっぱ猫だな」 「お前、猫派だっけ」 「うん」 　樹は？　と訊こうとしたけど、何故だか言葉が喉の奥でつっかえた。 「あー、猫、飼いたいなー！」 「ここ、ペット禁止だろ」 　毛玉を吐き出すみたいに言った言葉を、樹によって、サッとゴミ箱に捨てられてしまった。 　そんなことは分かっている。 「分かってるけどさあ。でも、可愛いじゃん。このへんでちょろちょろしてたら」 「動物なんて飼ったら世話大変だし、掃除大変だし、カネかかるし……」 「分かってるよ。分かってるけどさあ。いいなー、って思っただけ。ずーっと家の中でひとりで仕事してるとさあ、息がつまるっていうか……気分転換にこう……癒やしてもらう存在が欲しくなるっていうか……」 　言い終わる前に樹が鼻で笑った。 「息がつまるって……好きなことやってんじゃん」 　好きなこと。 　本当にそうだろうか。 　得意なこと、だとは思う。学生時代からの延長で、ウェブデザイナーとしてそこそこ稼げるようになった自分は、まあ得意なことを仕事にできただけ、恵まれているんだと思う。でも、それでも、嫌になるときはいっぱいある。好きなことを仕事にしている、と、思える自分は誇らしいのに、好きなことを仕事にしているね、と、他人から言われると、どうして逆に惨めな気持ちになるんだろう。