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6月6日(木)01:38 最高気温18.2℃、最低気温15.6℃ 晴れのち曇り
6月6日(水)01:38 最高気温18.2℃、最低気温15.6℃ 晴れのち曇り
ここに来て季節が急に逆戻りしたみたいな寒さだった。先週末、樹と一緒に早々に衣替えをしてしまったことを後悔した。薄い布団で二、三十分、我慢してみたけれど駄目だった。これは絶対、朝起きたら腹を下しているパターンになってしまう。
隣で寝ている樹を起こさないようそうっとベッドから降りて、クローゼットの扉をあける。圧縮された布団は、もう今シーズンは絶対出すことはないだろうと決意を込めた感じで、上段の一番奥に収まっている。
暗がりの中、何とかひとつ、取り出す。少し迷って、もうひとつも取り出した。樹に腹を下されても困る。
気をつけたつもりだったけれど圧縮袋をあけたとき、その音で樹が起きた。
「何やってんの」
「あ……ごめん、起こした……?」
「んー……」
「寒くてさあ……我慢できなくて……ほら、樹のも。この急激な温度変化、風邪引いちゃうよね」
寝ぼけながらも、上体を起こして布団を受け取ってくれようとした樹だったが、布団を手にした瞬間、突如として覚醒して眉間に皺を寄せたのが、暗がりの中でも分かった。
「お前……これ、あけたの?」
「あ、うん……」
「何やってんだよー、せっかく片付けたのに……また片付けなおさなきゃならないじゃん。こんなの出さなくてもさ、リビングにブランケットあっただろ。どうせ今日一日、二日くらいのことなんだからさー……」
「ごめん。俺が明日、ちゃんとやっとくから」
「いい。お前の圧縮の仕方じゃ、あのスペースに収まらないから」
そう文句を言いながらも、布団はちゃっかり受け取っている。
寒くはなくなったが、また別の意味で眠れなくなってしまった。
樹の方を向いては寝られなかった。でも反対側を向いたらもっと寝られなくなってしまった。意を決してにじり寄り、樹の背中に頬を寄せた。それだけじゃ我慢できなくなって、腕を回した。向き直って抱きしめ返してくれることはなかったけれど、拒否されることもなかった。
「ごめん、初めからこうすればよかった……なんて」
ぬくもりを分けてもらうみたいに力を込めた。
「ん……」と、また、返事だか何なんだか分からない声が、ぴくりともしない背中越しに聞こえた。
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