6月4日（火）06:12　最高気温27.2℃、最低気温19.6℃　雨 「今日も雨だねー」 「ああ、そうだな」 「でもまだ梅雨入り発表されてないんだよねー」 「ああ」 「もう三日連続雨なのに。そろそろ発表されてもおかしくないよね」 　すると樹はスマホで何やら検索した画面を、ずいっ、と突き出してきた。 　気象庁が定める梅雨入りの暫定的な基準。 『晴天が二日以上続いたあと、梅雨前線の影響で前日と本日が雨で、その後の一週間の天気予報が雨または曇り』 　日向が内容を理解するより早く、樹はくるりとスマホをひっくり返した。 「晴天が二日続いてないからな」 「へー、そんな基準があるんだ」 　初めて知った。 　だから、盛り上がれると思ったのに、樹の反応は薄かった。 　それもそうか。朝、バタバタしているときに何を呑気なと思われたかもしれない。証券会社のＩＢ部門で働いてている樹の頭の中は今、日経平均とか東証株価指数とか為替相場とかＩＲ情報とかでいっぱいなんだろう。……詳しくは知らないけど。 　外はざあざあぶりの雨で、いつもは玄関に続く廊下から靴を履いてドアをあけるまでノンストップで、いってらっしゃいを言う間もなく気づけばいない、ということの多い樹だけど、今日はめずらしく玄関でもたついていた。 「お前、ちゃんと閉じとけよ」 「あ、ごめん」 　傘立てに傘をひらいたまま入れっぱなしにしていたせいで、樹の傘に絡まってしまっていたらしい。 　樹がドアをあける。肩越しにため息とともに聞こえた呟き。 「いいよな、お前は在宅で」