「あ……ああっ！！　ハッ……」 「すげえ……はぁはぁ……全部入った……」 　ゆっくりとではあるが、グチュと言う音を立て章良のペニスがきっちり根元まで真琴の後孔に収まっていた。男とするセックス全てが初めてだった章良は、まるで壊れ物を扱う様に真琴を傷つけない様に細心の注意をする。自身のペニスが侵略した真琴の中は、これまで経験した事の無い締め付けと蠕動の為、一度吐き出したにも関わらず直ぐに果てそうになるほどの快感で、入れたまま暫く意識を反らせじっとしていた。 「……は……ぁ……じょ……すいくん……大丈夫？」 　横になった自分の上へ覆い被さる章良の顎からは、額から流れる汗がポタポタと真琴の鎖骨に降りかかり、耐える様に寄せられた眉間の皺が深くなっていた。真琴は、もしかしたら締め付けで痛いのでは無いかと思い、懸命に後孔の力を抜こうと短い息を吐きながら、章良の汗で濡れた髪を掻き上げた。 「ん……マコちゃんの中……すげぇ気持ちいい、持ってかれそう」 「いいよ、出して……ゴムしてるし大丈夫だよ」 「やだ」 「え？」 「また俺だけ先にイクのやだ、ちょっと落ち着いたから動くけど、マコちゃん身体キツくない？」 「……ちゃんと気持ち良いよ……それより幸せで頭が溶けそう」 「俺も……一緒に溶けちゃおう」 　身体が繋がったまま何度もキスをする。まるで世界に二人だけしか存在していないかの様な錯覚に落ちて幸せだった、額を付き合わせ、近い場所で（愛してる）と囁きながら見つめ合った。 　章良がゆっくりと腰を動かし、真琴の中を擦り始めると今度は真琴の額に汗が浮かび、口からは熱いが控えめな息が漏れ、真琴の瞳孔が徐々に開いて焦点がズレ始めると、真琴が躊躇いなく横に置いてあったバスタオルを自分の顔へ掛ける。 「ん、ん、ん……ぁ……ん……」 　顔を覆うバスタオルを噛んだ真琴のくぐもった声が、結合部分から聞こえる粘膜の擦れる様な音のリズムとシンクロして行く。 「マコちゃん、顔が見えない……バスタオル取るよ？」 　章良がバスタオルを取ると、今度は両腕で顔を隠しながら首を左右に振って、また違うタオルを顔へ乗せようとする真琴の腕を、章良が掴んで顔の両サイドへ固定した。 「……やっ……」 「なんで？　何が嫌なの？　もしかして何か我慢してる？」 「ちがっ……あ……んっ……声出ちゃうからぁ……それに、僕の喘ぐ顔……見たら、萎えるって……ああぁ――やっ……見ないで」 　章良から見て、真琴の顔が本気で困惑している事が解り、先程までは普通に顔を見合わせていたにも関わらず、突然こんな風に隠れようとするのかサッパリ理解が出来ずに、一旦動きを止めて泣き出しそうな真琴の目尻に優しく口付けた。 「声出して、俺はマコちゃんの声が聞きたいよ……それに俺ので気持ち良くなってるマコちゃんの顔見てる方が俄然元気になるんだけど」 「……でも……」 　真琴が潤んだ瞳で章良の顔を真っ直ぐ見ると、真琴の中にある章良のペニスがビクンと跳ねて少し質量を増やした。 「アッ……おっきい……うあぁ、んァ」 　イイ所に当たったのか真琴が頤を仰け反らせ、反った背中と腰を痙攣させる。 「あああ――――――っ！！　そこ、そこっ」 　真琴に反応があった場所を、章良がペニスの先でグリグリと何度も刺激すると、その度に真琴の薄い腹がヒクヒクと不規則に痙攣し、そのまま足先までピンと伸ばしながら声にならない声を出した。 「あ、あ、ん、ああァ、はっ……んァァ」 　全身に力が入り、これまで以上に真琴の中が章良のペニスを締め付けて来る。強い締め付けに耐えていると、次は吸い上げられそうな蠕動運動で章良を中へ外へと翻弄し始める。 　ヒクンヒクンと時折下半身を痙攣させる真琴だったが、そのペニスからは精液らしき体液は溢れなかった。しかし、顔を紅潮させ半開きの口と焦点の合わない瞳を泳がせる真琴の姿は、明らかにアクメに達した事には間違いは無かった。射精せずともアクメを感じる事が出来ると言う話は聞いた事はあったが、こうして目の当たりにするのは初めてだった。 「マコちゃんっ――ごめんっ……」 「ヒッぁあああ――――――――！！　まって、今イってる、イってるからああああ！！　やっ……あああああ――――――――！！」 　自分がする行為によって、愛する人が感じて絶頂へと上って行く様を目の当たりにし、章良はこれまで保っていた理性を飛ばし、まだヒクヒクと小さく痙攣させている細い腰をしっかりと固定し、自分が思うまま真琴の中を蹂躙し始めた。 　腰を少し持ち上げられ、しっかりと固定して逃げられない状態での容赦の無い突き上げは、絶頂に乗ったまま下りる事を許されない状態で、何度もアクメに達しイキっぱなしとなっていた。 「あ――――――アアアア、ヒィィィ――アアッああアまた、またイクイク、ィ……っちゃっっ――――グゥ――――！！」 　上半身を捻りながら積んである布団の端を掴み、引き寄せると、綺麗に積んでいた布団が雪崩の様に崩れたが、それでもその布団を掴みこの過ぎる快感から逃げようとして這い上がるが、その度に章良に引き戻され、これまで達した事の無い最奥の壁をゴリュ、ゴリュと固いペニスの先で突かれてその度に目の前にチカチカと小さな光が弾け、口からは絞り出す様な声が発せられる。 「イ――――――イク――――イクイクッ――――ああああああああ！！」 　限界まで背中を反らせ、両足の指先をギュっと握り込んだ次の瞬間、自分の最奥で章良のペニスがドクドクと脈を打ち射精した事を感じ、真琴のペニスの先からもダラダラと精液が流れ始め、被せていたスキンの中へ溜まって行く。真琴はこれまでに無く、全身をガクガクと大きく痙攣させた後、そのまま突然パタリと動かなくなった。 「ハッ……ァ……くッ……」 　章良が真琴の中から自身のペニスをズルリと引き抜くと、真琴の後孔はポッカリと口を開け、中の痙攣に合わせピンクの腸壁が徐々に閉じて行く様子が見えている。 「……エロ」 　今出したばかりだと言うのに、また挿入したくなる気持ちを何とか抑え、グッタリとしている真琴の顔を見ると、顔を横に倒したまま完全に気を失っている事が解り慌てて真琴の頬を軽く叩いた。 「マコちゃん？　マコちゃん！　マコちゃん！　マコちゃん！！」 「…………」 　激しい閃光と感電したかの様な絶頂を感じ、そのままプツリと意識が途絶えていた真琴が、必死になって自分の名を呼ぶ声に覚醒すると、ぼやけた視界に泣きそうな顔をした章良が見え、力無く微笑んだ。 「……じょうすい……くん……」 「マコちゃん！　よかった……よかった、よかった……よか……っ」 　泣きそうだった顔が本当の泣き顔になり、そのまま真琴を抱き締めて来た。真琴は横になったまま抱き締められた章良の背中に手を回し、ポンポンと泣く子をあやす様に優しく叩き（大丈夫だから）そう言って困り顔で笑った。 　絶頂の余韻も落ち着いて来たが、お互い何も纏わず裸のままで抱き合っていると、体温が混じり合い、何処からが自分の身体なのか解らなくなる。それがとても心地よく不思議で幸せだと感じる。 「……素肌で抱き合う事が……こんなに気持ちが良いなんて知らなかったなぁ」 　真琴がポツリとそう溢す。 「……これまでは違ってた？」 「うん、いつも下だけ脱がされてそのまま直ぐに挿入して、向こうが射精したらそれで終わりって感じで、割とドライだったよ……正直……後ろに入れられてこんなに気持ち良かったのは、初めてだ……こんなに時間をかけたのも、気持ち良くて意識を飛ばしたのも……初めてだよ。孝史は何時も突然要求して来てたし、後ろから抱かれる方が多くて、こうして向き合ってする時はいつもタオルで顔を隠してお互い見えない状態でやってた、それが興奮するのかは解らないけど……僕の喘ぎ声や顔を見ると冷めるって言ってたな」 　章良は、真琴の話を聞いて驚愕したと同時に激しい怒りを覚えた。自分も男だから解る……孝史は真琴の事を愛していた訳では無く、ただのストレス発散の為だけに真琴を支配していたのだ。真琴も恐らくそれは気付いているだろうが、それでもあの男を支えようと自分の気持ちを隠し頑張っていた。 「……くっそ……あのクズ、やっぱり5、6発殴ってやれば良かった」 　 「え？　何か言った？」 　章良は腕の中で身を預けている真琴の頭に顔を埋め（なんでもない）そう呟いて、抱き締める腕に力を込めた。 　ここは風呂場もあるが、そこには入らずタオルで身体を拭いて服を着、そのままこの場所を後にし、また完全に腰を抜かしてしまった真琴を背負いながら辰朗の家へ戻って行った。丁度最後の辻を曲がった所で目の前に島に着いた主治医が歩いているのが見え、一緒に家の中へ入る。 「店から随分時間がかかったね、もうとっくに着いてると思ってたよ」 「あ、えっと……」 「あの、僕が少し背中の震動に酔ってしまって……弁天さんの参道で少し休んでもらってたんです」 　何時もの医師が真琴の首の様子を見ながら口を開くと、章良が声を発する前に真琴が応えた。 「ああ、なるほど……眩暈や目が霞む事は？」 「それは無いです、ただ喉に違和感があるくらい」 「そう、こうして触診する限りでは気道が閉塞されたり、頸椎に何か異常があったり舌骨も大丈夫そうだけどね、医者的には本土の総合病院でレントゲンとエコーを勧めたいが…………」 　真琴が顔を俯かせ静かに首を左右に振ると、医師は（そう言うと思ったよ）そう言い、一晩様子を見て息苦しくなるならヘリを呼ぶ様にと言い渡し、診療所まで薬を取りにおいでと言い残して帰って行った。 【続】 　　2019/09/26　海が鳴いている23　 　　八助のすけ