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ドラッグセックス⑦(ラスト)

 儂の名前は栗橋望。  陸上部の高校三年生。  怪我で、大会に出ることはできなかったが。  それは仕方がないことだと思う。  怪我を全くしない人間なんていないし。  それに、その怪我をしたからこそ。  部活以外の面白いことを見つけることができた。 「快浬、大会お疲れ。優勝とか、すげえじゃん」  そう声をかけると、快浬は嬉しそうに笑う。 「ありがと。望」 「礼なんていらないよ」 「そうだ、放課後、少しだけ良いか?」 「? 良いけど」 「ありがとな」  快浬は、そう言って、教室に入っていった。  そして、放課後。  快浬は、儂の腕を引き、体育館に行く。  今日からテスト前で、部活はない。  とても静かな体育館。  そこで、快浬は緊張しながら言う。 「僕、ずっと望のことが好きなんだ」 「え……?」 「望は優しくて、努力家で。そこが、とても憧れていた。僕は、人付き合いが苦手で、うまくコミュニケーションとれないけど。そんな僕にも、望は優しくて……」 「………………」 「部活が終わった今。僕は、君とライバルではなく、恋人になりたいんだ」 「……うん。ありがとう」  ただ、お前の知る望は、もういないがな。  まあ、良い。  こいつも、望と同じくらい儂にちょうど良い器になるだろう。 「俺も、お前のことが好きだ。……恋人に、なろっか」 「うんっ」  快浬は、儂に抱きつく。  儂は、快浬の耳元で囁く。 「今日、金曜だからさ。うちに、泊まってきなよ」 「え?」 「恋人になった記念、祝お?」 「うん!」  かなりチョロい。  ああ、こいつは。  どんな風に、溺れていくのだろうか。  楽しみだよ、本当に。

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