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第1話 ゲイですが、何か?
佐々原瞬はゲイである。
しかも、ネコ。
いわゆる、抱かれたい側だ。
さして隠してはいないが、自分から差別されにいくつもりはないので、わざわざ言ったりもしない。
きっと上手く隠せているのだろう。
幼稚園からの付き合いである幼馴染みでさえ、未だに気付いていないのだから。
ただ、お仲間にはすぐにバレる。
会って15分、会話して5分で見抜かれた事もある。普段通りにしているつもりだったが、分かる人には分かるものだ。
瞬だって、お仲間はピンとくる。
まず男を見る視線が全く違う。そのイヤらしい視線に晒されといるのに、ノーマルの人たちは全く気付かない。
不思議だ―――と、いつも思う。
「先生、できた。」
サッカー部のエースである、西倉晴也がノートを差し出してきた。
「はいはい。」
瞬はにらめっこしていた資料をずらして、西倉のノートを目の前に広げた。ミミズのような字が波打ち、たちまち頭が痛くなる。
司令塔としては天才的になのに、勉強に関してはその頭を停止させてしまっており、毎回テストが赤点ギリギリ。
全国でもトップレベルのサッカー選手が、留年するなど笑い話だ。
いや、高校側からすれば、笑える筈ない。
だから、こうして副担任である瞬が、西倉たち『筋肉バカ』の為に勉強を見ているのだ。
部活の始まる前に、毎日15分。
―――なんて、面倒くさい。
「う~ん、半分か。これじゃ、まだ危ない気がするね。」
「そうっすか。」
西倉を初めて見たとき、タイプだな―――と、思った。端整な顔立ちなのに、目付きが悪い所。180オーバーの高い身長に、筋肉のついたしっかりついた体。
もろタイプだった。
でも話してみると、頭の出来が残念過ぎて、すぐに萎えた。生徒だから、萎えて良かった。
すっかり興味をなくした筈だったのに―――、最近、どうも目で追っている自分がいる。
まずいな―――と、思う。
「今日はもういいでしょ。また来週ね。」
「はい。ありがとうございました。」
素直に頭を下げる西倉に、微妙な気持ちになる。
まだ子供なのだ。
顔立ちや体つきはしっかりしているけれど、まだ高校3年生。世の中の事など何も知らず、真っ直ぐにただサッカーが好きな子供だ。
それなのに、
―――キミに抱かれたいなんて。
こんな邪な目でじっと瞬が見ても、西倉は不思議そうに首を傾げるだけだ。
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