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悲愛~願いごと。

 ウェリーは卑しいオメガの性を持つ。だから一人の人間として扱われたことはなく、常に奴隷のように蔑まれて生きてきた。  生きてきてこれまで願い事なんて口にしたことがなかったウェリーの心臓が大きく鼓動している。  ただでさえ、ゼフィールには衣食住を与えてもらっている。  その上まだ願い事などと身分もわきまえない強欲なオメガだと思われただろうか。  もしかすると、もう嫌われた?  いや、それこそが正しい方向ではないか。  ウェリーは熱くなる瞼をなんとか堪え、涙を流さないようギュッと目をつむった。 「――――」  しばらく沈黙が続く。朝の爽やかな空気とは打って変わって、ウェリーの心情は死の宣告でも受けられたように身体が硬直する。  口内に溜まった唾をごくんと飲み込めば、彼が静かに口を開いた。

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