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第18話

事の発端を作り上げた張本人、光から連絡がきたのは俺が煙草を吸い終わる頃だった。煙草の味を堪能していた俺は、眉間に皺を寄せながら火を消して。常備している携帯灰皿に吸い殻を放り込んだ後、それはそれは面倒にスマホを耳に当てる。 『もしもし、ユキちゃん?』 「あ?」 聴こえてきた声は、全く持って悪気を感じていない相変わらずな光の声だった。 光は、昔から俺のことをユキちゃんと呼ぶ。 女みたいでイヤだと、高校時代からずっと言ってきたのだが。直す気がないこの男に何を言っても無駄だと思い、俺はいつしかこの呼び名に馴れてしまって。 『もうすぐ家に着くんだけど、ユキちゃん俺の部屋にちゃんといる?』 「あー、煙草吸って待ってた」 悪気のなさも、呼び名も。 指摘することはせずに、俺はただ現状を光に伝えた。 『それなら良かった。あ、あのさ、せいって帰ってきてる?』 ……帰ってきてるもナニも、俺はその星くんとさっきまでイチャついてたんだけど。 そう思った言葉を呑み込み、俺はしらを切ることにして。 「んなもん、俺が知るワケねぇーだろ……って、まーたすぐ電話切りやがったな、このバカ王子」 光は言いたいことだけ述べると、いつもすぐに電話を切ってしまう癖がある。星が帰宅しているか問われた気がするけれど、その返答を待たずに光が通話を強制終了させた理由はわりとすぐに理解できた。 バタバタと騒音が聴こえてきたかと思えば、その後すぐに部屋のドアが勢いよく開いて。 「お待たせ、ユキちゃんっ」 「早ぇーな……っつーか遅せぇーわ」 連絡があった後のことを考えると、光の到着は物凄い速さだと思うが。1時間ほどこの家で待たされたことを思うと、やはり遅い光の登場は褒められたものではないのに。 「ユキちゃんは、女の子じゃないから待たせても問題ないんだよ。そんなことも分からないなんて、相変わらずユキちゃんはおバカさんだね」 サラサラの金髪を耳に掛け、俺を鼻で笑う王子様。黙っていれば綺麗なヤツなのに、コイツの俺の扱いはまるで奴隷のようで。 「お前さ、なんで俺にそんな冷たいワケ?」 理由を聞いたところでコイツの態度が変わるわけではないと思うが、俺がそう問い掛けると光は興味なさそうに流し目で俺を見る。 「なんでだろうね。昔から、ユキちゃんに優しくしたいって思わないんだよ」 「そりゃ、どーも」 光に優しくされたいなんて、俺がこれっぽっちも思っていないことを見抜かれて。俺たちの関係に優しさなんぞ端からなかったことに安堵した俺と、ニヒルな笑みを浮かべる光。 「それよりさ、ユキちゃんは何しに来たの。家までくるなんて珍しい、高校の時以来じゃない?」 「別に、特に用はねぇーんだけど。強いて言うなら暇だったから、今日はバイトもねぇーしな」 「えー、ナニソレ。俺はてっきり重大な用事があって、それで俺の家まで押し掛けて来たのかと思ってたのに」 「用事がなきゃ、俺はお前の家にもこれねぇーのか?」

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