25 / 142

第25話

煙草を吸いながらトボトボと、俺は家までの道のりを歩いていく。車に慣れると、歩くという行為自体がかなり面倒に感じて溜め息が洩れた。 アイツは、今頃何をしているのだろう。 さすがにもう起きているだろうし、光が購入したシュークリームでも食べているのだろうか。 そう思い、俺は歩きながらスマホを取り出すと星にLINEを送る。星の部屋から見える桜の写真と、星の顔写真を撮って俺に送るように、と。 ……因みに拒否権はない、そう付け加えて。 LINEを送って、その後にすぐに訪れた疑問は理解不能だ。俺はそんなに、今日初めて会っただけのアイツを縛り付けておきたいのだろうか、と。 人間なんて、どれも似たようなモンだと思って生きてきたのに。今まで付き合ってきたクソアマだって、どれもどうでも良かったのに。 ……なんでアイツだけ、こんなに気になんだよ。 ただの可愛らしい男の子、アイツのことなんか俺は何も知らないクセに。 知らないから気になるのか、知りたいから気になるのか。俺は、俺が分からない。 自問自答を繰り返していくうちに、辿り着いた我が家。はぁーっと大きく息を吐き、俺は家の鍵を開けた。大学に入ってから独り暮らしを始めたワンルーム、風呂とトイレは別、キッチンは割と使いやすい。 やっと手に入れた、自分だけ、俺独りだけの空間。まだ誰も入れたことのないこの部屋で、これから俺は何を考えて過ごすのだろう。 女を抱く時はホテルを使うか相手の部屋だし、そもそも最近はバイトが忙しくて女どころじゃかった。 大学は光と一緒の大学だけれど、学部は違う。 俺が好きなスポーツブランドのショップ店員のアルバイトは、君がいるだけで売り上げが伸びるからとギュウギュウ詰めでシフトを組まれているから明日は昼からバイトだ。 よくよく考えてみれば、俺に遊んでいる時間はない気がするのだが。そもそも、何故俺は今日光の家に足を運んだのか分からなかった。 暇だったことは確かだが、いつもの俺なら家で1日寝て過ごすはずだ。わざわざ光を誘い出してまで暇を潰す必要はなかったように思うのに、思い立ったが吉日で動いた昼間の俺はアホだと思う。 それに加えて、偶然が偶然を呼んだのだから不思議なものだ。 好奇心に踊らされ、関わりを持った相手がいる。それが男だとか、初恋だとか……今日の俺の言動全てが俺らしくないような気がして、俺はもう笑うしかないけれど。 とりあえず、俺は送ったLINEを確認することにして。既読がついた状態のままフリーズしている画面を眺め、その向こうで困り果てているであろう星の姿を想像する。 我ながら気持ち悪いと思いつつも、誰に見られているわけではないこの状況で、俺は零れ落ちる笑みを止めることができなかった。 それが何を意味する笑みなのかは、やはりまだよく分からない。写真に対する期待なのか、単純にこの状況が可笑しく思えるからのか……理由らしい理由にあり着くことはできないまま、今日の光とのやり取りで疲れ切った俺はボーッとしながら風呂場へと向かった。

ともだちにシェアしよう!