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第136話

サラダとドリンク、好みのメインが選択できて、それにデザートのワッフルが付くランチセット。好みのメインは二つまで絞ることができたけれど、どっちも食べたい欲張りなオレはテーブルに両手で頬杖をつく。 「俺がキッシュにするから、お前がオムライス頼めばいいだろ。お互いにシェアすれば、どっちも食えるし」 「それはとっても魅力的な案ですけど、白石さんはいいんですか?」 「良くなきゃ、最初から提案しねぇーっての。俺に気を遣う必要はねぇーから、決まったならボタン押して店員呼んでやれ」 口振りは気怠くてあんまり優しさは感じられないけれど、白石さんは甘い笑顔でオレに笑い掛けてくれたから。オレは白石さんの言う通りに店員さんを呼び、キッシュのセットとオムライスのセットをオーダーした。 注文した食事が届くまで、キョロキョロと店内を見渡してオレがソワソワしていると。白石さんは落ち着いた表情で、そんなオレに話し掛けてくる。 「……星はさ、料理人を目指してるんだよな。ちゃんとした夢を持って、そこに近づくために進路も考えて。お前はすげぇーと思う、単純に、感心する」 「いや、えっと……そこまで褒められるようなことは、まだ何もできてないです。高校生になったばかりだし、オレには学ばなきゃならないことが沢山あるから」 白石さんの発言で、オレの意識は店内の風景から白石さんへと向かった。 「そう思えんのは、お前が先を見てる証拠だろ。俺がお前の歳の頃、俺は何にも考えちゃいなかったし……今思い返しても、中坊の時に将来を定めて進路を決めるってのは、簡単なことじゃねぇーなって思うからさ」 「確かに、漠然とした夢を持って前を向くのは勇気がいるなぁって思います。オレだって、今からすごく勉強したとしても、実際に夢が実現にできるのかは分からないですし」 「そんでも、努力してることには変わりねぇーじゃん。今の頑張りがどこかで必ず花開くハズだろ、特にお前の場合は……なんとなく、そんな気がする」 指摘された内容を、オレは頭の中で確認する。 無意識に浮かれていた心が行動に現れていただけのような気がするけれど、どうやら白石さんにはそのように見えていなかったらしい。 将来のこととか、先のこととか。 オレだって、事細かにプラン立てて考えているわけじゃない。本当に大まかな設計で、今はまだ、フラフラしながら夢を追いかけているような感じなんだ。 それでも、何もないより考えはあった方がいいって。こんなオレのことを褒めてくれる白石さんは、優しい人だと思った。 「あの、たぶんオレ、オシャレなお店の雰囲気がまだ慣れないだけだと思います。ファミレスとか、ファーストフード店とか、家族以外の人とはそういったお店にしか行ったことがなかったから」 「なるほど……けど、光とデートすることもあっただろ?」 「デートって……まぁ、兄ちゃんと出掛けることもありますけど。でも、オレといる時の兄ちゃんは食べ歩きの方が好きなタイプなんですよ」

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