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第3話

「はよー、セイ。俺たちも今日から高校生だぜッ!」 「おはよ、弘樹」 家を慌ただしく飛び出たオレに声を掛けてくれたのは、幼馴染みの坂野 弘樹(さかの ひろき)だ。 オレと弘樹は、幼稚園からずっと一緒の幼馴染み。弘樹は幼稚園の頃からサッカー一筋のスポーツ男子で、176cmの身長に、はにかんだ笑顔が特徴的。 なんでこんなオレと一緒にいるんだろうとたまに不思議に思うほど、弘樹は友達も多くていつもクラスの人気者。そんな弘樹は大事なオレの親友で、家も近いから中学生までは一緒に登校していたけれど。 「まさか、高校まで弘樹と一緒に通うなんて思ってなかった。とりあえず、また3年間よろしくね」 変わったようで変わらない日常、それを感じさせるのは、オレの歩幅に合わせて横を歩く弘樹の存在。 「俺は、セイと同じ高校で嬉しいぜ。こちらこそ、とりあえず3年間と、更に先もよろしくな」 「更に先って、意味わかんないよ。でも同じ制服なのに、なんで弘樹が着るとそんなにかっこいいの。なんか、悔しいんだけど」 「褒めてくれてありがとな。けど、セイは七五三みたいですげぇ可愛いぞ」 隣で歩く弘樹に頭をポンポンと撫でられて、オレは少し不機嫌になる。兄ちゃんにされるのは嬉しいのに、弘樹にこういうことをされるのは、なんだか子供扱いされているみたいで気に入らなくて。 「七五三って、オレそんなに子供に見える?やっぱり魅力なんてないのかなぁ……これからオレは、兄ちゃんみたいに大人な男を目指す予定なのに」 自分が子供っぽいのを分かっているからこそ、オレは兄ちゃんのことをよく知っている弘樹にそう呟いた。 「七五三は冗談。でも、セイはそのままでも充分魅力的だぜ。セイはお前の兄ちゃんと、自分自身を比べすぎなんだよ」 「魅力的って……ずっと一緒にいる弘樹に言われても、あんまり嬉しくない」 「なんだよ、せっかく俺がセイのこと褒めてんのに」 「だってさ、褒められてる気にならないんだもん」 頬を膨らませて前髪をいじるオレの姿に、弘樹は爽やかな笑顔を見せて。馴れ親しんだ幼馴染みとの会話を繰り広げつつ、オレたちは駆け足で最寄り駅まで向かった。 遅刻するかもって急いでいたけれど、思いの外スムーズに高校まで辿り着くことができたオレと弘樹。 そんなオレたちが通う高校は、さまざまな学科があるんだ。 弘樹はスポーツ学科、オレは調理学科。 他には服飾学科、福祉学科、等々。 弘樹はもちろんサッカーで、オレは調理師を目指して。この春からオレたちは、ここで高校生活を送っていくことになるから。 「学科違うとクラスは違うのなぁ。今日はそれぞれの学科にわかれてのオリエンテーションだけだし、終わったら連絡入れるから、駅でメシでも食って帰ろうぜ」 「わかった、オレも終わったら連絡するね」 人見知りなオレが唯一、緊張しないで話せる親友と校門で別れると、当然のことながらオレは独りになってしまうわけで。オレはキョロキョロと辺りを見渡しつつ、自分のクラスまで向かうことにした。

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