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第38話

「お疲れさまでーす、お先に失礼します」 バイト仲間にそう声をかけ、俺は駆け足でショップから一歩外へ出ると最初の目的地、昨日光と行った雑貨屋まで向かった。 メルヘンチックな店に、男一人では入りにくいんだが。そうは言っていられない状況の俺は、腹を括って入店する。 その辺にいた店員に声を掛けて、取りおいてあるものをそそくさと受け取って。アイツに似てるってだけで、ぬいぐるみを衝動買いしてしまった自分のアホさにゲンナリした。 けれど、やはり似ている黒猫のぬいぐるみに文句は言えそうになくて。なかなかにデカいぬいぐるみを抱えた俺は、そのまま駅地下にあるお気に入りのパン屋に立ち寄った。 時間がないことを理由にし、ぬいぐるみを先に取りに行ったことを俺は激しく後悔するが、時は待ってくれなくて。周りからの視線が痛く感じるが、そんなことを気にしている暇はなかった。 ハード系のカンパーニュやバゲットが美味い店で、俺はすぐさま好みのパンを見つけたけれど。星を泊まらせるとなると、明日の朝食はアイツの分も用意しなきゃならないことに気づいた俺は思い悩んでしまって。 結局、ハード系のバゲットとこの店で人気のふわふわな食パンを購入した俺は、パンを買うという行為だけで頭の中に星が出てきたことに驚いた。 ……ったく、本当もう意味わかんねぇー。 心の中ではそう思っているはずなのだが、俺は約束の時間に間に合うようバイト中に予定を立てた順序で買い物を済ませていく。 朝食用のパンを購入した後は、夕飯に使う食材の調達。海外から輸入された食材等が置いてある、少し小洒落たスーパーマーケット。 この店で売っているチーズが気に入っている俺は、厚切りベーコンとチーズ、生タイプのフィットチーネパスタを手に取って。あとは適当に、俺が食いたい物を買い込んだ。 以外と荷物が多いこと、ぬいぐるみがデカいこと。その二つは誤算だったが、スムーズに買い物を終えることができた俺は、バイト先近くのパーキングに駐めてある車へと戻って。 後部座席に買った荷物を放り込むと、運転席へと乗り込んだ。やっとひと息つけると思いつつ煙草を咥えながら、俺は時間を確認する。 20時32分、俺はどうやら頑張ったらしい。 「……うめぇ」 疲れた身体に煙草の煙りが沁みていき、つい漏れた独り言。 ここから光の家の近くのコンビニまで、車で10分程度は掛かる……って、迎えに行くとは言ったが。俺が車で行くことを、俺は星に伝え忘れた。 アイツは、今頃ちゃんと支度をしているんだろうか。拒否権がないことは分かっているようだったが、これで来なかったら俺は笑い者だけれど。 ……まぁ、いいか。 煙草もそろそろ無くなるし、まずはコンビニで煙草を買おう。それから、慌ただしく動いて乾いた喉を潤すために缶コーヒーも買って。 もしも星が現れなかった時は、適当にドライブでもして帰ろうと。そうは思いつつも、俺は約束の時間に間に合うことに安堵しながら、車を目的の場所へと走らせた。

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